弁財天べんざいてん)” の例文
某人あるひとが「安芸あき厳島いつくしま弁財天べんざいてんへ、火のものを絶って祈願をめると、必ず覚えがよくなる」と云って教えた。尊は十二三であった。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
蛇が、つかわしめじゃと申すのを聞いて、弁財天べんざいてんを、ああ、お気の毒な、さぞお気味が悪かろうと思うものはありますまいに。迷いじゃね。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
徳川三代将軍家光の牟礼野田猟むれのかりの時、御殿山に休息して池の泉にかついやしてから、弁財天べんざいてん堂宇どううも立派にされました。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
その途々みちみち、廊下にも、庭先にも、戸棚の上にも、床の間にも、金仏、木像、古いの、新しいの、釈迦しゃかも観音も薬師やくし弁財天べんざいてんも、大小あらゆる仏像が置いてあるのは
ええ、そもそも羽田の浦を、扇ヶ浜おうぎがはまと申しまするで、それで、それ、此地を要島、これは見立で御座いますな。相州そうしゅうしま弁財天べんざいてんと同体にして、弘法大師こうぼうだいしの作とあります。
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
しかも無限性を牽出ひきだすもの、こゝに吉祥天きちじょうてん伎芸天ぎげいてん弁財天べんざいてんなどゝいふ天女型の図像が仏菩薩ぼさつ像流行を奪つて製作され、中の幾つかゞ今日に残り、人間性の如何いか矛盾むじゅんであり
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
問『またとないよい機会おりでございますから、う一つ二つたずねさせていただきうございます。————あの弁財天べんざいてん申上もうしあげるのは、あれはみな女性じょせい竜神様りゅうじんさまでございますか?』
北条高時は江ノ島の弁財天べんざいてん参籠さんろうして、船で浜御所へもどる海上の途にあった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この浄明寺の阿弥陀像を鑑賞した目で、すぐ先にある弁財天べんざいてんを見ることは、鶴見にはいかにもつらかった。先刻休んだ池中の出島に堂構えがあって、その堂内に安置されていた有名な裸体像である。
きざはしの下に立って、仰ぐと、典雅温優てんがおんゆうなる弁財天べんざいてん金字きんじふちして、牡丹花ぼたんかがくがかかる。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
弁財天べんざいてんは母である。そしてわしは不運なおおくの子供たちの慈父じふになりたい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
続いて経蔵きょうぞう弁財天べんざいてんと言う順序である。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)