かぼ)” の例文
………その癖いつも味方になってかぼうて上げてるのんに、人に一言いちごんの相談もせんと、あんな板倉みたいなもんとそんな約束してしもうて、………
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
きょうのことも、家憲をたてに、家来どもが怒りおるとかいうことじゃから、そちをかぼうて助けおくわけにも参らぬ。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人の車夫をきっと見ながら、お鶴をかぼうて立ったのは、洋装した一個中脊の旅客であった。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「又しても止むるか。仇をかぼうか……」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『まだようわからぬ、それ程、この身をかぼうてくれるおん身が、なぜ、捕手を使嗾しそうして、私を苦しめたのですか』
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
緋鹿子の片隅に手を添えて、小親われをかぼうて立ちぬ。国麿は目を怒らしたり。その帯は紫なり、その襯衣しゃつくれないなり。緋鹿子の座蒲団は、われと小親片手ずつ掛けて、右左に立護たちまもりぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「兄の宗時が、よそながら護っていてくれます。兄の友達どもも、今ですから申しますが、私をかぼうてくれて、この後とも、兄と力をあわせてくれる約束ですから」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朱の盤 姥殿、しっかり。(姫をかぼうて大手を開く。)
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「よしよし、るなら大樹の蔭という。……秀吉にるがいい、かぼうてとらせるぞ。心配すな」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いじらしいものだ。それはまだ二十歳はたちにも足らぬ旅すがたの女子。矢弾やだまのなかに迷うていたのを、兵に申しつけて、八幡原の社家のうちにかぼうておいたぞ。はやく戻って、無事を
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「宗治どのが申されました。かくまで微臣びしんかぼうて給わる御主君にむくわでやあるべき。このうえは、われだに切腹なせば、御和談も成り、かたがた、主家の御名にも傷つくことはあるまいと」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何をいう。それゆえにこそ、城へ入れて、かぼうてやれと申すのじゃ」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
飽くまでそち一名の思い寄りとか、牛若自身が平家の手よりのがれて、寄るべもなきまま、ご当家を力に頼って来たというていなれば——おやかたにおかれても、ずいぶんかぼうてつかわそうとのお言葉である
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが、この日吉どのだけは、いつも於福をかぼうて下さるそうな。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)