幸吉こうきち)” の例文
幸吉こうきちは、またかわいそうに、自分じぶん平常いつもジャックをかわいがってやるものだから、たすけてくれるとおもって、うち物置ものおきにきてかくれたのだ。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
お前の名前のことについてであるが、今後はお前も一人前となることゆえ、名前が幸吉こうきちではいけない。彫刻師として彫刻の号を附けねばならぬ。
その名をどうして記憶しているかというと、私の北条にいたころ、家主の家の子が幸吉こうきちといういたずらっ子で、そいつが私の家へ来ていたずらをする。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
『マアお上がんなさいな、今日こんにちはどちらへ。』お神さんは幸吉こうきち衣装なりに目をつけて言った。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
小母さんは、火鉢の上で、快い音をたてて、たぎっている鉄瓶のお湯を湯呑に入れて、二階へもって行かれました。丁度、その時菓子屋の幸吉こうきちさんが、這入って来られたのでございます。
備前国びぜんのくに岡山表具師幸吉こうきちというもの、一鳩をとらえてその身の軽重羽翼の長短を計り、我身の重さをかけ比べて自ら羽翼を製し、機を設けて胸前にて操り搏飛行す、地よりあがることあたわず
天保の飛行術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「なにしろお祖父さんと誰とかが死んじまったていことは知ってるだが、そのほかのことはなにも忘れちまったらしいんですよ、自分の名はおせん、赤ン坊はこう坊って呼んでますが、幸吉こうきちとか幸太郎とかいうんでしょう、そいつも覚えちゃいねえようです」
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
かれうちにじっとしていられませんでした。ちょうど叔父おじさんが、みせにいなかったので、幸吉こうきちは、酒屋さかやまえほうはしっていきました。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
幸吉こうきち、お前はしばらく此所で荷物の番をしていてくれ、おれたちはまた引っ返して来るから」
「なんで物置ものおきなかはいったのだろうな。」と、幸吉こうきちは、あのとしっていてもりこうで、敏捷びんしょういぬがと不思議ふしぎおもいました。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)