巨躯きょく)” の例文
興至るやじつにしばしば畳叩いて三語楼と巨躯きょくの貞丈は、〽モリヨリヨーン、モリヨリヨーン…… と諷い出し、そのたび金語楼
寄席行灯 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「な、な、な、なにをしおった?」と、居間から旦那様の叫喚きょうかん! つづいて廊下をずしんずしんと旦那様の巨躯きょくがこっちへ転がってくる気配がした。
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
秘書官と令嬢とが同時に駈け寄って、伯爵の巨躯きょくを支える様にしたが、伯爵は已に昏々こんこんと不自然な眠りに陥っていた。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
正面きって海図をながめている駒井甚三郎に向って、田山白雲は、室の一隅の長椅子に寝そべるように巨躯きょくを横たえて、磊落らいらくな会話を投げかけている——
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
栄二はこぶの巨躯きょくと、当惑したような口ぶりを思い返しながら、おまえはいい男だよ、と万吉に向って云った。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「承った——」と、やおら自来也鞘じらいやざやを左にひっさげて、巨躯きょくを起こした天堂一角。九鬼弥助、森啓之助を先に立たせて、酔いざましの好場所もあらばと腕をやくして立ち上がった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見あげるようなその巨躯きょくに圧倒され、眩惑げんわくされていた。彼らの云うところにむかって、さて、それは——と、あれこれ思いめぐらす足がかりがこちらには何一つないのであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
裏返しにされた亀の子のように、歌麿の巨躯きょくは、床の上でじたばたするばかりだった。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
膃肭獣おっとせい成牡せいぼ(ブル)、年齢八、九歳、体重八十貫、牡牛おうしのごとき黒褐色の巨躯きょく
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
父の手が直也の手に触れた丁度その刹那せつなに、発せられた弾丸たまは、皮肉にも二十貫に近い荘田の巨躯きょくを避けて、わずかに開かれたドアすきから、主客のはげしい口論に、父の安否を気遣って
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
微笑ほほえましかったのは、米国のスカアル選手のダグラスさん、六尺八寸はあろうと思われる長身巨躯きょくが軽々と、左手にスカアル、右手に、美しい奥さんをいて、艇庫から、船台まで運び
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
鰐口は晩酌ばんしゃくの最中で、うるさいと思ったが、いやにしつこくいどんで来るので着物を脱いで庭先に飛び降り、突きかかって来る才兵衛の巨躯きょくを右に泳がせ左に泳がせ、自由自在にあやつれば
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
人波にまれながらも、その巨躯きょくが目立って見える。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
腰から下に、子供たちが群がったところを見ると、与八の巨躯きょくが、雲際うんさいはるかにそびえているもののようです。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、ついに花和尚も、その重たげな巨躯きょくを、のしッと、腰かけていた曲彔きょくろくから上げた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四十キロもありそうな巨躯きょくと、ゴリラも恥ずかしがるだろうようなものすごいつら構えをしていて、その子供をみつけると、歯をき出して唸りながら、のそりのそりと近よって来るのである。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「どれ、小便をして来よう。」と言って巨躯きょくをゆさぶって立ち上り、その小山の如きうしろ姿を横目で見て、ほとんど畏敬いけいに近い念さえ起り、思わず小さい溜息ためいきをもらしたものだが、つまりその頃
酒の追憶 (新字新仮名) / 太宰治(著)
バンとひどい音を立てて、怪賊の巨躯きょくが、板のに叩きつけられた。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
梁首席りょうしゅせき巨躯きょくが、壇上だんじょうに現れた。
巨躯きょくを持っている。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)