山神さんじん)” の例文
「や、や、あの山神さんじんほこらの台座、後面の石垣のまん中の丸石を抜き取ると、その下が抜穴、そこに佐渡の金箱が隠して有るので御座りまするか」
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
餓鬼がきが死んでくれたんで、まあ助かったようなもんでさあ。山神さんじんたたりには実際恐れをしていたんですからね」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
山神さんじん化して大蛇となり道に当る、日本武尊、蛇をまたいでなお行く、時に山神、雲を起し氷を降らし、とあります。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
市川海老蔵えびぞうの名を継いだので、「川中島」の狂言のなかで団十郎と菊五郎とが猟夫になってその改名の口上こうじょうを述べ、海老蔵が山賊になって山神さんじんやしろからあらわれて
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのあかりで、早や出端でばなに立って出かかった先生方、左右の形は、天幕がそのままの巌石がんせきで、言わねえ事じゃあねえ、青くまた朱に刻みつけた、怪しい山神さんじんに、そっくりだね。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山神さんじんの石のほこら、苔に蒸し、清水の湧出わきいず御手洗池みたらしいけには、去歳こぞの落葉が底に積って、蠑螈いもりの這うのが手近くも見えた。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
まあ、なんにしてもここまで無事に来りゃあもう占めたもの、どこか今夜はひとつ山神さんじんほこらでもお借り申して一晩泊めてもらって、それから明日の朝、野見坂峠を
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
紅麻こうあさの絹の影がして、しろがね色紙しきし山神さんじんのお花畑を描いたような、そのままそこをねやにしたら、月の光が畳の目、寝姿に白露の刺繍ぬいとりが出来そうで、障子をこっちで閉めてからも
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
刷毛はけかの毛を生やしたような森ですから、中に山神さんじんほこらがあって、そこに人身御供ひとみごくうの女がうめき苦しんで、岩見重太郎の出動を待っているというような意味の森ではありません。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
が、いずれも葉を振るって、素裸すはだか山神さんじんのごとき装いだったことは言うまでもない。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一度いちどは、あまりのくるしさに、三國沿岸みくにえんがんで……げて……いや、これだと女性ぢよせいちかい、いきなり飛込とびこんでなうとおもつた、とふほどであるから、一夏ひとなつ一人旅ひとりたびで、山神さんじんおどろかし、へびんで
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)