尻下しりさが)” の例文
私の穿いていた藍縞仙台平あいじませんだいひら夏袴なつばかまは死んだ父親の形見でいかほど胸高むなだかめてもとかくずるずると尻下しりさがりに引摺ひきずって来る。
少兀すこはげの紺の筒袖つつそで、どこの媽々衆かかあしゅうもらったやら、浅黄あさぎ扱帯しごきの裂けたのを、縄にった一重ひとえまわし、小生意気に尻下しりさがり。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やや下ぶくれでくちびるが小さくいて出たような天女型の美貌びぼうだが、額にかざした腕の陰影いんえいが顔の上半をかげらせ大きな尻下しりさがりのが少し野獣やじゅうじみて光った。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
えりからの前垂まへだれ幅廣はゞびろやつを、遣放やりぱなしに尻下しりさがりにめた、あとのめりに日和下駄ひよりげた土間どま突立つツたち、あたらしいのをあてがつても半日はんにち駈破かけやぶる、つぎだらけの紺足袋こんたびひざツきり草色くさいろよれ/\の股引もゝひき
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そうわれる度に真佐子は、取り返しのつかない絶望におちいった、蒼ざめた顔をして、復一をじっと見た。深く蒼味がかった真佐子の尻下しりさがりの大きい眼に当惑とうわく以外の敵意も反抗はんこうも、少しも見えなかった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)