小忰こせがれ)” の例文
すると、先刻さつきから一行を出迎へに来てゐた、自動車王の持地の隣りに住んでゐるリイといふ男の小忰こせがれあとを追うて森の茂みに姿を隠した。
彼はまた、酒の上のきげんのよい心持ちなぞから、表玄関の長押なげしの上に掛けてある古い二本の鎗の下へ小忰こせがれを連れて行って
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
商人あきゅうどはもとより、親が会社員にしろ、巡査にしろ、田舎の小忰こせがれでないものが、娘をいじめる仔細しさいはない。故あるかな、スパルタもどきの少年等が、武士道に対する義憤なのである。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
長順 (回想に耽るが如く夢幻的に、)の時其方は全盛の歌ひ、殊に但馬守殿が執着のおもひ者、われは貧しき沙門の小忰こせがれ、どうせ儘ならぬ二人の中、思ふがまよひと人にもいはれ
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
此處こゝところ印度洋インドやうその不屆ふとゞき小忰こせがれめは何處どこる。』と艦上かんじやう速射砲そくしやほうそゝいで
その判官殿と申さるるは、平治の合戦に負け、父を討たれた後みなし子となり、やがて鞍馬くらま寺の稚児ちご、後には金商人かねあきんどの後にくっついて、奥州まで食糧を背負うていった小忰こせがれのことであろう
小忰こせがれめが飛んだ無礼を働きまして、なんとも申し訳がございません」
小忰こせがれ悪戯いたずらゆえ、なにとぞ深くおとがめなく容赦ようしゃされたい」
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本陣の小忰こせがれというところから、宗太は特に問屋の九郎兵衛に許されて、さも重そうにその首桶くびおけをさげて見た。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)