ところ)” の例文
私は、ハテ不思議だ、屹度お宮のことを言うのだろうが、何うしてそれが瞬く間に此の婆さんのところにまで分ったろうか、と思って、首を傾けながら
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「怒るもんか、唯喫驚びっくりするばかりだよ。僕んところのお父さんなんか随分喫驚したぜ。そして最早もう仕方がないって言った」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「由や、御苦労だが、ちょいとあの二人をつけて、はいったところを見届けてくんねえ。」
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
……乃公わしところ今日けふ小供ばう袴着はかまぎ祝宴いはひがあつて、いま賓客きやくかへつたが少しばかり料理れうり残余あまつたものがあるが、それをおまへげたいから、なにか麪桶めんつうなにかあるか、……麪桶めんつうがあるならしな。
「よく何ともござりませんでしたな。この渓流の出るところが保津川ほづがわの上流でござります。わしはこれから一里半ばかり下の深谷村の儀助ぎすけというものでござりますが、まあわしのところで少しおやすみなさるがようがすだ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから二三日して長田のところに遊びに行くと、長田が——よく子供が歯を出してイーということをする、丁度そのイーをしたような心持のする険しい顔を一寸して
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「宮ちゃん、さっき君のところ階段はしごだんの下に突っ立っていたあの丸髷にったひとは何というの」
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
時々私のところへ来ては、婆やのように、おばさん/\と、くさやで、お茶漬を一杯呼んで下さいと言って、自家うちに無ければ、自分で買って来て、それを私には出来ないから、おばさんに焼いて
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
しかるにさっきからさも思い迫ったように柳沢のところにゆきたがっていたあと、そうと口に出されて見ると、私は木から落されたさるといおうか何といおうか自分が深く思いつめていればいるほど
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)