室蘭むろらん)” の例文
それは室蘭むろらん碇泊ていはくしているころからの計画であった。その計画は、サンパンを占領するという点までは、彼の計画どおりに進行したのである。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
今日学校で武田たけだ先生から三年生の修学旅行しゅうがくりょこうのはなしがあった。今月の十八日の夜十時でって二十三日まで札幌さっぽろから室蘭むろらんをまわって来るのだそうだ。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
室蘭むろらんか、函館はこだてまで来る間に、俺は綺麗さっぱり北海道と今までの生活とに別れたいと思って、北海道の土のこびりついている下駄を、海の中に葬ってくれた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そして、社として僅かに這入つて來た金を社員の出張旅費に分配して、次號の材料並びに廣告を取る爲め、小樽、旭川、帶廣、釧路くしろ室蘭むろらん地方へ、社員を分派したところだ。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
カクラ婆さんの話 室蘭むろらん絵鞆えども部落に明治十年頃の生まれでカクラという女がいた。「カクラ」(kakura)とは、昔の支那そばのしによく入って来たフジコのことだ。
えぞおばけ列伝 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
もちろん俄仕込にわかじこみで、粒揃つぶぞろいの新橋では座敷のえるはずもなく、借金がえる一方なので、河岸かしをかえて北海道へと飛び、函館はこだてから小樽おたる室蘭むろらんとせいぜい一年か二年かで御輿みこしをあげ
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
室蘭むろらん通ひの小さな汽船が波にゆられて居る。汽車は駒が岳をうしろにして、ずうと噴火灣に沿うて走る。長萬部をしやまんべ近くなると、灣を隔てゝ白銅色の雲の樣なものをむら/\と立てゝ居る山がある。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
東京を立つてから山形、船川港ふなかはかう弘前ひろさき、青森、津輕つがる海峽を越えて室蘭むろらんと寄り道しながら、眼差す苫小牧とまこまいへと着いたのが七八日頃、それから九月へかけてのまる一ヶ月ほどを妹夫婦の家にくらした。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
春澳の子は現に北海道室蘭むろらんにいる杲一こういちさんである。陸実くがみのるが新聞『日本』に抽斎の略伝を載せた時、誤って宝素を小島成斎とし、抱沖を成斎の子としたが、今にいたるまでたれもこれをたださずにいる。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
さて北海道のエドモは室蘭むろらんの東南半里ほどの磯山陰にあるアイヌ部落である。古い頃ひがし場所の一つであったために内地人にも知られている。絵鞆崎とも江友ともあるが元禄郷帳にはエンドモという。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
津軽海峡つがるかいきょう、トラピスト、函館はこだて五稜郭ごりょうかく、えぞ富士ふじ白樺しらかば小樽おたる、札幌の大学、麦酒ビール会社、博物館はくぶつかん、デンマーク人の農場のうじょう苫小牧とまこまい白老しらおいのアイヌ部落ぶらく室蘭むろらん、ああぼくかぞえただけでむねおどる。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
室蘭むろらんではしようがない」のであった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)