おば)” の例文
新一はおばさんが睡っても、己は決して睡るまいと思って気を張っていたが、これも気を張ったなりに何時の間にか睡ってしまった。
狐の手帳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あなたのことはかねてたき竜神りゅうじんさんからうかがってります……。ではお言葉ことばしたがってこれからお邪魔じゃまいたそうか……。雛子ひなこ、このおばさまに御挨拶ごあいさつをなさい。
「私がここへ来たのは、おばさんを見舞いに来たのですよ。ついあわてたものですから、苗字を忘れたのですよ。」
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
ヨシ先がその気なら此方こっちもその気だ、畢竟ひっきょうおばと思えばこそ甥と思えばこそ、言たい放題をも言わして置くのだ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
越後の蓮華寺れんげじ村のおばが井という古井戸などもその一つで、そこでも人が井戸のそばに近よって、大きな声でおばと呼ぶと、たちまち井戸の底からしきりにあわが浮んで来て
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
天象、地気、草木、この時に当って、人事に属する、赤いものと言えば、読者は直ちに田舎娘のおば見舞か、酌婦の道行振みちゆきぶりを瞳に描かるるであろう。いや、いや、そうでない。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうせおばさんには子供はあるまいから、僕の子供をかかあと二人で世話するとして、お前は畠を作ったり本を読んだりするんだね。そして馬を一疋飼おうじゃないか。……お前は馬に乗れるかい?
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
イルゼのおばさんは石に据わって番をしてくれる。7680
公子の妹の嬌娜とおば松姑しょうこが伴れだって来た。親子はいそいで内寝いまへ入った。しばらくして公子は嬌娜を伴れて来て孔生を見せた。
嬌娜 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「私がそう思っていたのは、久しい間のことだよ。ただ私は、遠くへいけないから、お前さんが伴れて、おばさんに見知らせてくれると、好い都合だよ。」
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
いかにも案外と、本意ほいない様子で、近所へ療治を頼まれて行っている、いまにも帰るでしょう。おばがという。尼刀自の事です。お顔を見たら、どんなに喜ぶか知れません。女中も迎いに出しました。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『でもおばさまはわたくし可愛かわいがってくださいますもの……。』
... 自堕落者揃いだ。おばにしてもあねにしても。……私だってこれで老父さんには敗けないつもりだからねえ」……「向家むこうの阿母さんが木村の婆さんに、今度工藤の兄さんが脳病で帰ってきたということだが、工藤でもさぞ困ることだろうと言ってたそうなが、考えてみるとつまり脳病といったようなもんさね。ヒヒヒ」
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
新一は肩のあたりを揺り動かされて眼を覚したが、その起している者がおばさんだと云うことを知ると、きっと怪しい奴が来ているなと思った。
狐の手帳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
王はひどく喜んで、すぐ入っていきたいと思ったが、おばの名も知らなければ往復したこともないので、何といって入っていっていいかその口実こうじつがみつからなかった。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
おばさん、殺して……殺して……」
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「よし、吉公の云ったように、鼠取を使ってやろう、おばさんなんかに黙ってて、一人でそっとやってやれ」
狐の手帳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その時、王のおばにあたる老婆があった。それは沈の姉であった。年は六十あまりであった。
珊瑚 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「いや、今晩は、みょうにいやな晩だから」と、云って政雄は四辺あたりをきょときょと見ていたが、「おばさん、今晩は陰気でしょうがない、気のどくだが、二階へ往って、けてくれないか」
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それはじぶんおばさんのような温みのあることばであった。少女の微笑が聞えた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
彼処あすこおばさんの眼を見ろ、光っているじゃないか」
村の怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
おばさん、もう寝たの」
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)