奥義おうぎ)” の例文
つまり全く彼の文学上の観念の曖昧さを彼自身それに就いて疑わしいものがないということで支えてきた這般しゃはん奥義おうぎを物語っている。
ちなみに太郎の仙術の奥義おうぎは、懐手ふところでして柱か塀によりかかりぼんやり立ったままで、面白くない、面白くない、面白くない、面白くない
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
助太刀や、とめだてはおろか、誰ひとり見る者もなく、栄三郎と左膳、各剣技の奥義おうぎを示して、ここを先途と斬りむすんでいるのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あなたが独りで勉強しているのを見て、殿さまが若殿をよこして、学問の奥義おうぎを講釈させて上げようと思ったのです。
「ですが、大江匡房おおえまさふさの家書家統をいで、六韜りくとう奥義おうぎきわめられたとか。ご高名は、この地方でも隠れはありません」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここは大日本の魚山として聞えたる大原の来迎院こそは声明の根本道場と聞くからに、ここで修行をさせていただきたい、奥義おうぎというもおこがましいが
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「外でもないが、拙者幼年の頃より、独立自発、心肝しんかんくだいて、どうやら編み出した流儀の、奥義おうぎを譲ろう」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
剣道の奥義おうぎを会得するために念々修業しております、しかるにあの娘たちは淫卑いんび猥雑わいざつ、けがらわしき言動を以てわれわれを悩まし、神聖なる草庵を汚涜おとくいたします
似而非物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あわれこの人男子と生れて太棹ふとざおを弾きたらんには天晴あっぱれの名人たらんものをとたんじたという団平の意太棹は三絃芸術の極致にしてしかも男子にあらざればついに奥義おうぎ
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
身には揚心流小太刀の奥義おうぎがあっても、何しろ対手の武器は飛び道具でしたから、叫びつつも京弥がたじろいでいるとき、再びぱッときな臭い煙硝えんしょうの匂いが散るや一緒で
恋愛を有せざる者は春来ぬ間の樹立こだちの如く、何となく物寂しき位置に立つ者なり。しかして各人各個の人生の奥義おうぎの一端に入るを得るは恋愛の時期を通過しての後なるべし。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
……その多門亡き今は、代わってそちに授けなければならない。何んと女子よ、多門の代わりに、倶係震卦教の奥義おうぎを極わめ、天朝恢復の大望に、加担を致す気はないかな?
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ここに一人の極悪人がいて、あらゆる手段をつくしたならば、十歳の子供だって、殺人の奥義おうぎ会得えとくしないと、どうして断言することが出来ましょう。又嘘をつくことだって同じです。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼にとってはこの事のほかに何らの真理も奥義おうぎもない。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
のんだくれで、のんき者で、しようのない泰軒先生、実は、自源流じげんりゅう奥義おうぎをきわめた、こうした武芸者の一面もあるんです。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その武道の奥義おうぎに達しさえすれば、太刀に依って得た練磨も、槍をれば槍に通じ、鉄砲を持てば鉄砲に通じ——決して未熟な不覚はあるまいかと存じます。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それが大きな見当違いさ。ああしてぺこぺこ詑びてはいるが、あの眼の配り、腰の構えは、先ず免許皆伝も奥義おうぎ以上の腕前かな。みていろ、今にあの若者が猛虎のように牙を出すから」
武蔵国むさしのくに秩父小沢口の住人じゅうにん逸見太四郎義利は、この溝口派の一刀流を桜井五助長政というものにいて学び、ついにその奥義おうぎきわめて、ここに甲源一刀流の一派を開き関東武術の中興とうたわれたので