夜長よなが)” の例文
ふゆ夜長よながに、粉挽こなひうたの一つもうたつてやつて御覽ごらんなさい。うたきな石臼いしうす夢中むちうになつて、いくらいても草臥くたぶれるといふことをりません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そのためばかりとも言えないが、冬の夜長よながになると五、六人以上、じゅんまわりに朋輩ほうばいの家にあつまってきて、いろいろ話などをしながらにぎやかに苧を績んだ。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
一、長閑のどかあたたかうららか日永ひながおぼろは春季と定め、短夜みじかよすずしあつしは夏季と定め、ひややかすさまじ朝寒あささむ夜寒よさむ坐寒そぞろさむ漸寒ややさむ肌寒はださむしむ夜長よながは秋季と定め、さむし、つめたしは冬季と定む。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
即ちよいあかつきとの場合が多い。なお筆のついでであるからちょっとここでいって置きたいのは、日永ひながが春で、短夜が夏で、夜長よながが秋で、短日みじかびが冬であるのは、理窟からいったら合わぬ話になる。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
そうしてぷかりぷかりと夜長よながを吹かす。木魚もくぎょの名をスポーランと云う。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
浅草あさくさ夜長よながの町の古着店ふるぎみせ
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
加藤洲かとうす大百姓おおびゃくしょう夜長よながかな
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
我命つゞく限りの夜長よながかな
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)