外曲輪そとぐるわ)” の例文
「組頭。てまえは、主命によりまして、三日ほど、外曲輪そとぐるわ御普請ごふしんのほうへ、全力でかかることになりました。その間、どうかよろしく——」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遠江とおとうみのくに浜松城の外曲輪そとぐるわに、お繩小屋といって軍用の繩やむしろを作る仕事場がある、板敷のうちひろげた建物で、今しも老若四五十人の女たちが藁屑わらくずにまみれて仕事をしていた。
日本婦道記:萱笠 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
こうして、彼が一代に作った田産と、豊田郡とよたぐんの一丘をぼくして建てた柵、本屋ほんやしき、物倉ものぐら外曲輪そとぐるわなどの宏大な住居は、親類中の羨望の的であった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ていねいな一礼を答えて、そのまますたすたと外曲輪そとぐるわの方へ足を早めた。いつもは厳に消燈して真っ黒な本丸の閣にも、ちらと灯影ほかげがうごいていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
荘厳そうごんといっていいほどな道場である、外曲輪そとぐるわの一部で、ゆか天井てんじょうも、石舟斎が四十歳頃に建て直したという巨材だ。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「水の手へなど行ってどうするのかッ。もう敵は、外曲輪そとぐるわを破り、本丸の味方からも、裏切が出ている今——」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二の丸、外曲輪そとぐるわなどをつつむ樹林の闇が、える空にあわせて、うしおのように、ただ揺れ鳴っているだけだった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
以前は、山路将監しょうげんが坐っていたが、秀吉が、配置代えを命じて、山路や大金を外曲輪そとぐるわに出し、木村隼人佑重茲しげのりを本丸へ入れたのは、つい先頃のことであった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宗矩は、外曲輪そとぐるわの玄関にかかる。かくと知ると、若殿のお帰りと伝え合って、昔ながら仕えている家臣や小者たちが、彼を迎えて、下へもかない騒ぎである。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊吹のたちをみると、道誉は駒をゆるめ、深い林に入る外曲輪そとぐるわの口から北国街道の方をふり向いた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かの女は、大勢の避難民を、危険なる外曲輪そとぐるわから、二の丸の森と空地の一所に移し、召使の女たちを連れて、折々、見舞っていた。病人には薬を。子どもらには菓子を。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といいあいながら、一応、本丸にあつまり、さらに、外曲輪そとぐるわとの間に、徹夜てつやで、防禦線ぼうぎょせんを築いた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「猿。ゆうべかな? ……。そちは外曲輪そとぐるわ普請場ふしんばで、だいぶ大言を吐いたというではないか」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外曲輪そとぐるわの塀の腰までつかっている。あの分では、おそらく城内も池だろうと思いやられる。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遠い山脈やまなみひだに雪を見て高啼くのか、ここの天井にまで肌さむいこだまとならずにいなかった。それと大庭をめぐる外曲輪そとぐるわの林の外を、折々、霜のうごくような兵の刀槍がチラチラ通る。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正季は曲輪くるわの内へ入って、物具もののぐ奉行の佐備さび正安に会い、やがてまた、ただ一人で、外曲輪そとぐるわのガタガタする長い板廊下を踏んで、物具倉もののぐぐらと共にあるだだッ広い武者溜むしゃだまりのゆかを覗きに行った。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近侍きんじをはじめ侍女こしもと薙刀なぎなた、八めんをつつんでワッと追いかぶさったが、雪ともつかぬひょうともつかぬふしぎなものが、近よる者のひとみに刺さって、見るまに怪異かいいな老婆のかげは、外曲輪そとぐるわの闇へ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、いわれて、小者と共に、外曲輪そとぐるわ薪倉まきぐらの方へ、追いやられた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、先に立って、外曲輪そとぐるわの新陰堂へ、客を導いて行った。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ヤッ、おまえたちは、外曲輪そとぐるわ番卒ばんそつではないか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さらに外曲輪そとぐるわをふみこえ、本丸まで入ってみた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外曲輪そとぐるわうまやをのぞき
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)