外套マント)” の例文
ところがそれからまた二日置いて、三日目の暮れ方に、かわうそえりの着いた暖かそうな外套マントを着て、突然坂井が宗助の所へやって来た。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
帽子や外套マントをぬごうともしないで、じっとたたずみながら、壁や家具やすべてこれから別れようとする物に手を触れ、窓ガラスにひたいを押しつけ、愛する品々の接触を心に止めて長く忘れまいとした。
宗助は清に命じた通りを、小六に繰り返して、早くしてくれとき立てた。小六は外套マントがずに、すぐ玄関へ取って返した。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宗助そうすけきよめいじたとほりを、小六ころくかへして、はやくしてれとてた。小六ころく外套マントがずに、すぐ玄關げんくわんつてかへした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ところがそれからまた二日ふつかいて、三日目みつかめがたに、かはうそえりいたあたゝかさうな外套マントて、突然とつぜん坂井さかゐ宗助そうすけところつてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宗助はこの世界と調和するほどな黒味の勝った外套マントに包まれて歩いた。その時彼は自分の呼吸する空気さえ灰色になって、肺の中の血管に触れるような気がした。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その夕暮ゆふぐれであつたか、小六ころくまたさむ身體からだ外套マントくるんでつたが、八時過はちじすぎかへつてて、兄夫婦あにふうふまへで、たもとからしろ細長ほそながふくろして、さむいから蕎麥掻そばがきこしらえてはうとおもつて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)