墓詣はかまい)” の例文
「お彼岸だものですから、お墓詣はかまいりに一人で出て来たついでに、あんまり気持がいのでつい何時いつまでも家に帰らずにふらふらしていました。」
楡の家 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
新「わたくしは師匠の墓詣はかまいりに参りますと、お久も墓詣りに参って居りまして、墓場でおやお久さんおや新吉さんかと云う訳で」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
自分はこの牡丹餅から彼女が今日墓詣はかまいりのためさとへ行ってその帰りがけにここへ寄ったのだと云う事をようやく確めた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
墓詣はかまいりといっても、故郷くには遠国なので、浅草寺せんそうじへでもお詣りして、何か一つ、今日は善いことをして帰ろうと思うのだ。……だから遊山のつもりで、一献ひとつりましょう
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌日の九月の十二日は諸聖祭トドロス・サントスの日で、蘭人は死蘭人しらんじん墓詣はかまいりをし、天守堂に集まって礼拝する。
この墓詣はかまいりはわたくしやまいとこにつくまでざっと一ねんあまりもつづいたでございましょうか……。
墓詣はかまいり」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
この時ほど美しいと思った事はない。余は浩さんの事も忘れ、墓詣はかまいりに来た事も忘れ、きまりがるいと云う事さえ忘れて白い顔と白いハンケチばかりながめていた。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だんだんこと次第しだいをしらべますると、はなしはずっととおむかしわたくしがまだ現世げんせきて時代じだいさかのぼるのでございます。まえにもおはなししたとおり、良人おっと討死後うちじにごわたくし所中しょちゅうそのお墓詣はかまいりをいたしました。