堤防ていぼう)” の例文
もつと道路どうろあるひ堤防ていぼうさがりにつて地割ぢわれをおこすこともあるが、それはたんひらいたまゝであつて、開閉かいへい繰返くりかへすものではない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
堤防ていぼうにも人が一杯である。そしてすべての群衆は、川中に行われつつある何事かを、一心に注視しているのであった。
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
はじめからんでいるも同然どうぜんまち建物たてものや、人間にんげんなどのつくったうちや、堤防ていぼうやいっさいのものは、打衝ぶつかっていっても、ほんとうにんでいるのだからいがない。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
この公用とは所謂いわゆる公儀こうぎ(幕府のことなり)の御勤おつとめ、江戸藩邸はんていの諸入費、藩債はんさいの利子、国邑こくゆうにては武備ぶび城普請しろぶしん在方ざいかた橋梁きょうりょう堤防ていぼう貧民ひんみんの救済手当、藩士文武の引立ひきたて等、これなり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
さっき、病院に出かけるときには、ふかい闇につつまれていた堤防ていぼうの上に、小さいランタンが幾つとなくゆれている。それが子供の出生に何かふかい関係かんけいがあるように思われてきた。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
三人は南の堤防ていぼうにたどりついてみますと、東、北、西の三方を山でかこまれた池は、それらの山と、まっ白な雲をうかべているばかりで、あたりには、人のけはいがまるでありません。
いぼ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
おりよく、それが貨車かしゃであったからたいした負傷者ふしょうしゃはなかったけれど、貨車かしゃ幾台いくだいとなくこわれて、なかまったり、堤防ていぼううえ転覆てんぷくしたりして、たいへんなさわぎになりました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)