嘔吐おうど)” の例文
此頃よりせふ容体ようだい尋常たゞならず、日を経るに従ひ胸悪くしきりに嘔吐おうどを催しければ、さてはと心にさとる所あり、出京後しゆつきやうご重井おもゐ打明うちあけて、郷里なる両親にはからんとせしに彼は許さず
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
引斷ひきちぎりては舌鼓したうちして咀嚼そしやくし、たゝみともはず、敷居しきゐともいはず、吐出はきいだしてはねぶさまは、ちらとるだに嘔吐おうどもよほし、心弱こゝろよわ婦女子ふぢよし後三日のちみつかしよくはいして、やまひざるはすくなし。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
翌二十三日は浜町中屋敷の当直の日であったのを、所労を以て辞した。この日に始て嘔吐おうどがあった。それから二十七日に至るまで、諸証は次第に険悪になるばかりであった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
船室は忽ちに嘔吐おうどの声氛氳ふんうんとして満ち、到底読書の興に安んじがたく、すなはちこの古帽と共に甲板に出れば、細雨蕭条せうでうとして横さまに痩頬そうけふを打ち、心頭りんとして景物皆悲壮、船首に立ち
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
南洲はいんかいせず、ひて之をつくす、たちま酩酊めいていして嘔吐おうどせきけがす。東湖は南洲の朴率ぼくそつにしてかざるところなきを見てはなはだ之をあいす。嘗て曰ふ、他日我が志をぐ者は獨此の少年子のみと。
この頃より妾の容体ようだい尋常ただならず、日を経るに従い胸悪くしきりに嘔吐おうどを催しければ、さてはと心にさとる所あり、出京後重井に打ち明けて、郷里なる両親にはからんとせしに彼は許さず
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)