ほろぼ)” の例文
天の将に斯の文をほろぼさんとするや、後死の者斯の文に与るを得ざるなり。天の未だ斯の文を喪さざるや、匡人其れわれを如何せんと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そもそも天の此文しぶんほろぼさざるの深意なるべし。本日たまたま中元、同社、てずから酒肴しゅこうを調理し、一杯をあげて、文運の地におちざるを祝す。
中元祝酒の記 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
きょうの地で暴民に囲まれた時昂然こうぜんとして孔子の言った「天のいまだ斯文しぶんほろぼさざるや匡人きょうひとそれわれをいかんせんや」が、今は子路にも実に良くわかって来た。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
子、きょうとら(拘)わる。曰く、文王すでに没したれども、文はここ(吾が身)にあらずや。天のまさの文をほろぼさんとするときは、後死者われ(孔子自らいう)は斯の文にあずかるを得ざるべし。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
又後世に於て、民の、吾が故にりて、己が父母かぞほろぼせりと言はむことを欲せじ。豈に其れ戦勝ちての後に、まさ大夫ますらをと言はむ哉。夫れ身をて国を固くせむは、また大夫ますらをならざらむや。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
森春濤が挽詩ばんし二首の一に「百年天未喪斯文。強自慰君還哭君。二子有才如軾轍。一時刮目待機雲。若将鉛槧纘先緒。応為彝倫遺大勲。惆悵吟魂招不返。幽蘭隔岸水沄沄。」〔百年天未ダ斯ノ文ヲほろぼサズ/強ヒテ自ラ君ヲ慰メまた君ヲ哭ス/二子才有ルコト軾轍ノ如シ/一時刮目シテ機雲ヲ待ツ/シ鉛槧ヲもっテ先緒ヲ
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
また、我が封建の諸藩において、老儒先生を重役に登用して何等の用もなさず、かえって藩土のために不都合を起して、その先生もついに身をほろぼしたるもの少なからず。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
子曰く、ああ天予をほろぼせり、天予を喪せり。(先進、九)
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)