吾儘わがまま)” の例文
「他人の世話になりながら、退屈はおそれ入るな。おめえみたいな吾儘わがまま者は見たことがねえ。おれを、刑部とまちがえちゃ困るぜ」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世に居玉わぬとて先祖の御心も察し奉らず吾儘わがままばかり働くは、これを先祖を死せりと申し、勿体もったいなき事どもなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
其処そこには又千百いろいろ事情が御座いまして、私の身に致しますと、その縁談は実にことわるにも辞りかねる義理に成つてをりますので、それを不承知だなどと吾儘わがまま
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しかし前日の母の教へを記臆きおくして居りましたから、まんざら吾儘わがまま慾張よくばつた様なことだけ其中そのうちありませんかつた。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
都会と田舎の此争は、如何に解決せらるゝであろう乎。京王は終に勝つであろうか。村は負けるであろうか。資本の吾儘わがままが通るであろう乎。労力のなげきが聴かるゝであろう乎。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
僕は吾儘わがままな向っ腹を立てて歩きだした。するとうしろから魚戸の声が追駈おいかけてきた。
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
草履のそろわないうちは、駕を抜け出ないところは、やはり吾儘わがままでも放縦ほうじゅうでも大名育ちらしいが、万太郎そろそろ常の駄々ぶりを現して
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが為に主人は非常な立腹で、さう吾儘わがままを言ふのなら、費消つかひこみまとへ、それが出来ずば告訴する。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
もしこの心得なくおのが心にまかせて吾儘わがまま一ぱいを働きなば、如何いかでその家衰微せざらんや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
都会が田舎の意志と感情を無視して吾儘わがままを通すなら、其れこそ本当の無理である。無理は分離である。分離は死である。都会と田舎は一体いったいである。農がみだりに土を離るゝの日は農の死である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
吾儘わがままを云いあうことができるのだった。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
むしろ恥をしのんでも、必ず、憎ッくき吾儘わがまま娘を成敗して、聟殿のご面目を立てるにくはない。……唯、しばらくのご堪忍を
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十六歳の夏、兄と阿蘇あその温泉に行く時、近道をして三里余も畑のくろ草径くさみちを通った。吾儘わがままな兄は蛇払へびはらいとして彼に先導せんどうの役を命じた。其頃は蛇より兄が尚こわかったので、ず/\五六歩先に立った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
『でも、真雄や。……れの胸も察してやったがよい。環は、吾儘わがままや自分の移り気で、養家を出たのではありませぬぞ』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぼくらはつねに、それも何十年、挿画壇の人々にめいわくをかけ吾儘わがままをゆるしてもらって来たわけである。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
読者の代弁のつもりだからそんな吾儘わがままもいえる。そのかわり、初めの絵より、よくなったのは確かであった。描き終わると、健吉さんは、日光の華厳を見に行った。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
堂上の姫で、吾儘わがままで、勝気で、世をねている御方の始末には、さすがの家綱もちょっと当惑した。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それをてめえ、有り難えと思わず、ふさいで、さアあったという段になってから、じぶくるなんざあ吾儘わがまますぎるッてもんだぞっ。俺たち夫婦を、板ばさみにして、腹癒はらいせする気かっ
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
兵庫は、駈け寄るなり、駕のたれをね上げたが、もう間にあわなかった。吾儘わがままで、容易に意志を曲げない女だけに——みずから喉を突いた短いやいばも、襟へ抜けるほど深く貫いていた。
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
流人るにんとはいえ、まだまだ多分に貴族的な起居をゆるされている頼朝は、配所の家人けにんに対しても、ずいぶん吾儘わがままなふうがあった。盛綱などは、腹を立てて、何度も渋谷へ逃げ帰った。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
恋の盲目は何をするか分らない——殊に御方は公卿出の気位きぐらいと、江戸で別扱いの吾儘わがままに勝った人、まったくそんなこともやりかねないのである。新九郎はのどを締められるような強迫を感じた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、取ってもらわないと、これから吾儘わがままが頼めないから」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
豪雨が出ても、その附近だけは、もう水は吾儘わがままでなかった。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
寺西閑心と並んで吾儘わがまま無類と云われた豪の者深見重左衛門。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まことに、吾儘わがままらしい申し出でござるが——」
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)