可怪あやし)” の例文
人の形が、そうした霧のなかに薄いと、可怪あやしや、かすれて、あからさまには見えないはずの、しごいてからめたもつれ糸の、蜘蛛の幻影まぼろしが、幻影が。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
段々だん/\むら遠退とほのいて、お天守てんしゆさびしくると、可怪あやし可恐おそろしこと間々まゝるで、あのふねものがいでくと、いま前様めえさまうたがはつせえたとほり……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
常さんの、三日ばかり学校を休んだのはさる事ながら、民也は、それが夢でなくとも、さまで可恐おそろしいとも可怪あやしいとも思わぬ。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つねさんの、三日みつかばかり學校がくかうやすんだのはことながら、民也たみやは、それがゆめでなくとも、まで可恐おそろしいとも可怪あやしいともおもはぬ。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この二股坂と言うのは、山奥で、可怪あやしい伝説が少くない。それを越すと隣国への近路ちかみちながら、人界とのさかいへだつ、自然のお関所のように土地の人は思うのである。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこへ、あの連中は行ったんだろうか、沼には変った……何か、可恐おそろしい、可怪あやしい事でもあるのかね。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかるにさかさまに伏してのぞかぬ目には見えないであろう、尻ッこけになったいわおの裾に居て、可怪あやしい喬木の梢なる樹々の葉をしとねとして、大胡坐おおあぐらを組んだ、——何等のものぞ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
滝太郎は可怪あやしい目をして
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)