友人ともだち)” の例文
よくツケ/\と人を圧迫おしつける様な物言ものいひをする癖があつて、多少の学識もあり、村で健が友人ともだち扱ひをするのは此男の外に無かつた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
今は亡きかずの美妙斎を始め、紅葉、緑雨、二葉亭などの逸事を書いた内田魯庵氏は、友人ともだちの台所の小遣帳から晩飯のさいまで知りぬいてゐるのが自慢で
『お前にも阿母おつかさんにも迷惑めいわくは掛け無い。わしの友人ともだちが来て知らぬれ出したとお言ひ。』
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
ところで窩人と山の獣とは、ほとんど友人ともだちの仲であった。決して両個は敵同士ではなかった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
廿年から東京に住居致しておりながら、交際とて、人間が、互ひに嘘をつきあいの、それが何になる事ぞと。友人ともだち一人ないを自慢の気質には、私が身の落着きを、安心の首途かどでにして。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
処が、例の難波戦記を貸してれた友人ね、其お友人ともだちに智慧を付けられて貸本屋へ借りに行くことを覚えたのです。併し塾に居るんですから、ナカ/\きびしくつて外出をさせません。
いろ扱ひ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ああ、昔の友人ともだちと競争した時代から見ると、私も余程これで変ったんですなア
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
隨分ずゐぶん故郷こきようそらなつかしくなつたこと度々たび/\あつた——むかし友人ともだちことや——品川灣しながはわん朝景色あさげしきや——上野淺草うへのあさくさへん繁華にぎやかまちことや——新橋しんばし停車塲ステーシヨンことや——回向院ゑこうゐん相撲すまふことや——神樂坂かぐらざか縁日えんにちことや——よろづ朝報てうほう佛蘭西フランス小説せうせつことや——錦輝舘きんきくわん政談せいだん演説えんぜつことや——芝居しばゐこと浪花節なにはぶしこと