さっ)” の例文
しかしこれ一部を以て全部をおおうものである。一度旧約聖書をさって新約に入らんか、この種の陰影はごうも認めがたいのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
単身たんしんさってその跡をかくすこともあらんには、世間の人も始めてその誠のるところを知りてその清操せいそうふくし、旧政府放解ほうかい始末しまつも真に氏の功名にすると同時に
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
病的な、暗愁の多い春はさって、淡々として白い夏が来たのだ! しかし、もう遅い。春は去てしまった。
抜髪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
清浄しょうじょう潔白、おのずから同藩普通の家族とはいろことにして、ソレカラ家をさって他人に交わっても、そのふうをチャントまもって、別につつしむでもない、当然あたりまえな事だとおもって居た。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
教会は余が自立し得る時にあたって余を捨てたり、教会我をすてし時に爾は我を取り挙げたり、余の愛するものさって余はますます爾に近く、国人こくじんに捨てられて余は爾のふところにあり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
その貧乏が過ぎさった後で昔の貧苦を思出おもいだして何が苦しいか、かえって面白いくらいだから、私は洋学を修めて、その後ドウやらうやら人に不義理をせず頭を下げぬようにして
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ああ神よ余は教会をさってもなんじを去る能わざるなり、教会に捨てらるる不幸は不幸なるべけれども爾に捨てられざれば足れり、ねがわくは教会に捨てられしの故を以て余をして爾を離れざらしめよ。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
老母の大坂見物も叶わずさて神戸こうべついた処で、母は天保七年、大阪をさってから三十何年になる、誠に久し振りの事であるから、今度こそ大阪、京都方々ほうぼうを思うさま見物させてよろこばせようと
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)