動出うごきだ)” の例文
私が窓から首を出して挨拶をする時、汽車は動出うごきだして、父の眼をしょぼつかせた顔がチラリとして直ぐあとになる、見えなくなる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
一目そのえんなのを見ると、なぜか、気疾きばやに、ずかずかと飛着いて、下りる女とは反対の、車掌台の方から、……早や動出うごきだす、鉄の棒をぐいと握って、ひらりと乗ると、澄まして入った。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
石垣の草蒸くさいきれに、ててある瓜の皮が、けてあしが生えて、むく/\と動出うごきだしさうなのに、「あれ。」と飛退とびのいたり。取留とりとめのないすさびも、此の女の人気なれば、話せば逸話に伝へられよう。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
じっと、……るに連れて、次第に、ゆるく、柔かに、落着いてを描きつゝ、其のまるい線のがっするところで、又スースーと、一寸二寸づゝ動出うごきだすのが、何となく池を広く大きく押拡おしひろげて、船は遠く
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
五体ごたい満足まんぞく彫刻物ほりものであつたらば、真昼間まつぴるま、お前様めえさまわしとが、つら突合つきあはせた真中まんなかいては動出うごきだしもすめえけんども、つき黄色きいろ小雨こさめ夜中よなか、——ぬしいまはなさしつた、案山子かゝし歩行あるなかれたら
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)