功名こうみょう)” の例文
実はそういう抜けがけの功名こうみょうみたいなことは禁じられているのですが、余暇を利用して、個人としてやるのなら構わないと思いました。
妻に失恋した男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼はあたかも主人の功名こうみょうを予覚しているように、大事のお鉄砲を肩にして大股に歩いて行った。お松もお島もおみよも門前まで出て見送った。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
つまらない野心があるから、勢力の出し惜みをしたり、抜駆けの功名こうみょうをたてようとしたりするから、いつも失敗だらけだ。余は切に警告したい
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たとえば愛国の理想をえがくならば、戦争のとき、馬背ばはいにまたがって功名こうみょう手柄てがらをするをもってただちに理想とは称しがたい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
殺したところで功名こうみょうにも手柄てがらにもならぬ。のぼりつめた時にも冷静になり得る竜之助、お浜の取乱した姿をにらんでいる。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「馬がほしい、馬がほしい、武士が戦場で、功名こうみょうするのはただ馬だ。馬ひとつにある。ああ馬がほしい」
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
およそ私の心事はこんな風で、藩に仕えて藩政を如何どうしようとも思わず、立身出世して威張いばろうとも思わず、世間で云う功名こうみょう心は腹の底からあらったように何にもなかった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
おとめはもとよりこの武士がわかいけれども勇気があって強くってたびたびの戦いで功名こうみょうてがらをしたのをしたってどうかそのおくさんになりたいと思っていたのですから
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
えゝ戦場の折には敵を断切たちきるから太刀たちとも云い、片手なぐりにするから片刀かたなともいい、又短いのを鎧通しとも云う、武士たるものが功名こうみょう手柄を致す処の道具、太平の御代に
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「さればサ。功名こうみょう手柄てがらをあらわして賞美を得た話は折々あるが、失敗した談はかつて無い。」
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そこでたとえばいさましい戦争せんそうの曲をひきながら、かれはジョリクール大将たいしょうが登場を知らせた。大将はインドの戦争でたびたび功名こうみょうあらわして、いまの高い地位ちいにのぼったのである。
あやまちの功名こうみょうでございますわね。しかし随分危険な病気ですから、それぐらいのことでもなければ埋め合せがつきませんわ。尤も小川はそれが口惜しいと見えて、この頃では何かと申すと謹直を
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
この弱点はたちま怪我けが功名こうみょうとなりぬ。
矢立のちび筆 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
笛でたてたる 功名こうみょうばなし。
魔法の笛 (新字新仮名) / ロバート・ブラウニング(著)
代官の方から言えば怪我の功名こうみょう、ではない、功名の怪我を、そのままおとりに使ったという次第であろうと想像するのです
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
れば軍人の功名こうみょう手柄、政治家の立身出世、金持の財産蓄積なんぞ、いずれも熱心で、一寸ちょいと見ると俗なようで、深く考えると馬鹿なように見えるが、決して笑うことはない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ことにこの附近は、秀吉の第二の故郷として、その功名こうみょうの発祥地と言いつべきですから、この「唐冠」の太閤様は、ほぼ児童走卒までの常識となっている。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
つつしんで筆鋒ひっぽうかんにして苛酷かこくの文字を用いず、もってその人の名誉を保護するのみか、実際においてもその智謀ちぼう忠勇ちゅうゆう功名こうみょうをばくまでもみとむる者なれども、およそ人生の行路こうろ富貴ふうきを取れば功名を失い
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
この老人を打ち取っても功名こうみょうにはならない。絵馬代用の鍋蓋試合なべぶたじあいをはじめたところで芝居にもならない。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もう槍先の功名こうみょうの時代じゃあがあせん
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)