はり)” の例文
皆まで嘘でなかろう、虎が蝟に制せらるるは昨今聞かぬが豪猪やまあらしつとてそのはりに犯され致命傷を受くる事は近年も聞くところだ。
今は鶯これにのみ鳴きて聞かせ、つひにははりの間に飛び入りて、血を流して死にき。われ人となりて後、しば/\此歌の事をおもひき。
けだし露国の農民の信仰を代表する者にして、死も自然の者なれば、はり多き者としてにくまれはせで、極めて美くしき者とまで彼等の心には映るなり。
トルストイ伯 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
たゞ有情うじやうの者をのみ蹴る記憶のはりの痛みによりてしば/\涙を流さしむることあり 一九—二一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
妻の一言々々は毒を含んでいて、しかも彼女はどこがわたしの最も痛いところかよく心得ているので、そこを狙ってはりをさすのです。争いの進行につれて、それがます/\ひどくなる。
はりの陣をば張つて居る。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
はりは花より刺多き
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
かの人をしてはほのほに入り、一たびは烟となれど、又「フヨニツクス」(自らけて後、再び灰より生るゝ怪鳥)の如く生れ出でゝ、毒を吐き人をやぶるといふ蛇のはりをば
いわく虎は山獣の君なり、かたち猫のごとくにて大きさ牛のごとく黄質黒章きのしたじくろきすじ鋸牙鉤爪のこぎりばかぎのつめ鬚健にしてとがり舌大きさ掌のごとくさかさまはりを生ず、うなじ短く鼻ふさがる、これまでは誠に文簡にして写生の妙を極め居る。
我は今無言なり、膝を折りて柱にもたれ、歯をみ、眼をめいしつゝあり。知覚我を離れんとす、死のはりは我がうしろに来りてをりうかゞへり。「死」は近づけり、然れどもこの時の死は、生よりもたのしきなり。
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
ジエンナロはしりへを指ざして、かしこにてはわれ薔薇を摘み得たりと云ふ。われはうなづきて、心の中にはこの男の強顏きやうがんなることよ、まことははりに觸れて自ら傷けしものをとおもひぬ。