)” の例文
女房のめるのもきかずに、彼はおまきの台所へ忍んで行って、内の様子を窺っていると、やがておまきの嬉しそうな声がきこえた。
半七捕物帳:12 猫騒動 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と手真似でめて、かくしから取りだした一ルイの金貨を卓子テーブルの隅においた。それから彼は坐りこんで語りだした。声は少しふるえを帯びていた。
誤診 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
ばかりでなく、爺があまり馬鹿馬鹿しい苦労などをする時には、むしろ、ののしりに近い言葉でめることがあった。
山茶花 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
如何どういうものだか、内でお祖母ばあさんがなめるようにして可愛がって呉れるが、一向嬉しくない。かえっ蒼蠅うるさくなって、出るなとめる袖の下を潜って外へ駈出す。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そして直ぐにも加藤の家に移る積りだつたが、色々と小川家の人達にめられて、一日だけ延ばした。小川家には急に不愉快な、そして寂しい空氣が籠つた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
娘の君子は、警官に抱きめられながらも、母親の変りはてた姿へおいおいと声をあげて泣きかけていた。
銀座幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
『なんだ、人をめておいて、自分は怖しく気早に駈けて行く。いつも、先陣をやるのはあの手だな』
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
口さがない女中どもの舌だけはめようがなく、もういい加減拡まったとみえて近所の人々、泊り客などのおどろいた顔が、遠くの庭隅、廊下のあちこちに群れ集ってこそこそささやき合っているのを
めもせず、老人はうなずいた。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
来て見るとの始末で、仔細わけは知らぬが七兵衛老爺じじいの箒のもとに、一人の女が殴り倒されているので、めずにはられぬ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
福田病院では、附添つきそいに来てくれた美波さんという看護婦が文学好きだったので、私が未だ読書をめられていた頃から、毎日のように読んでもらっていた。
そして直ぐにも加藤の家に移る積りだつたが、色々と小川家の人達にめられて、一日だけ延ばした。小川家には急に不愉快な、そして寂しい空気が籠つた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
又之丞は、めた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちに一方の高島の方は二階番のお吉と仲好くなり過ぎてしまった。仇討なんぞはあぶないからおしなさいと、女がしきりに心配してめるようになった。
半七捕物帳:04 湯屋の二階 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
顔をしかめたり、自分で調合した薬をんだりしていたのであったが、それでも、山の畠に、陸稲おかぼの落ち穂を拾いに行くのだと言って、嫁のおもんがめたにもかかわらず
山茶花 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
める人が無ければ、殺しかねまじき勢ひだ。滅多に負ける事がない。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
納屋なやで稲をいでいたのであったが、父親が、おもんがめるのをかずに出て行ったらしい気配なので、世間体せけんていなどを考え、どうしても引き止めなければならないと思って庭へ出て来た。
山茶花 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)