けづ)” の例文
一二二むけ一二三物せし中に、木のはしけづりたるに、一二四那須野紙なすのがみのいたうふるびて、文字も一二五むらぎえして所々見定めがたき、正しく妻の筆の跡なり。
又わたくしは事実をもとむるに急なるがために、翫味するに堪へたる抒情の語をも、惜しげなくけづり去つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
吾人は嘗て彼の原稿なるものを見しことあり、其改刪かいさんの処は必ず墨黒々と塗抹とまつしてけづりたる字躰の毫も見えざる様にし、絶えて尋常書生の粗鹵そろなるが如くならず。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
よつ其駁雑そのはくざつけづり、校訂かうてい清書せいしよし、豚児とんじ京水にゑがゝしめしもの三巻、書賈しよかこひおうじ老人につげゆるもつてしきしに、発販はつはん一挙いつきよして七百余部よぶひさげり。これより書肆しよし後編こうへんふ。
よつ其駁雑そのはくざつけづり、校訂かうてい清書せいしよし、豚児とんじ京水にゑがゝしめしもの三巻、書賈しよかこひおうじ老人につげゆるもつてしきしに、発販はつはん一挙いつきよして七百余部よぶひさげり。これより書肆しよし後編こうへんふ。
旦那の骨折りで裁判にもならずにけづり去られて、お勝が戸主、自分が後見といふことになつてからは、旦那が殆んど入りびたりに長火鉢の前へ坐るので、さま/″\に囃し立てる村の評判が
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
凡そ此等の書の中には、初めいにしへの本草経が包含せられてゐた。しかし其一部分はみだりけづられて亡びた。唯他の一部分が蕙蘭けいらんの雑草中に存ずるが如くに存じてゐる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
多くもあらぬ藏書をひもとき、舊業をたづぬることも難く、大學の籍はまだけづられねど、謝金を收むることの難ければ、唯だ一つにしたる講筵だに往きて聽くことは稀なりき。
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
多くもあらぬ蔵書をひもとき、旧業をたづぬることも難く、大学の籍はまだけづられねど、謝金を収むることの難ければ、唯だ一つにしたる講筵だに往きて聴くことは稀なりき。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
わたくしは榛軒の父蘭軒と同じく本草に通じてゐたことを示さむがために、多く上文をけづらなかつた。榛軒の妻子を伴ひ帰つた家は、木賀の松坂屋ではなくて、宮下の奈良屋である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
わたくしは忌憚きたんなき文字二三百言をけづつて此に写し出した。しかし其体裁ていさい措辞そじは大概窺知きちせられるであらう。丁卯は慶応三年である。大意は「人君何天職」の五古を敷衍ふえんしたものである。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)