“刎起(はねお)” の例文
夫婦(ふうふ)はこれに刎起(はねお)きたが、左右(さいう)から民子(たみこ)を圍(かこ)つて、三人(さんにん)六(むつ)の目(め)を注(そゝ)ぐと、小暗(をぐら)き方(かた)に蹲(うづくま)つたのは、何(なに)ものかこれ唯(たゞ)一羽(は)の雁(かり)なのである。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と言って刎起(はねお)きました。自分が踏台となるべき義務を忘れて寝込んでしまった怠慢を、さすがに慚愧(ざんき)に堪えないものと見えて、その周章(あわ)て方は尋常ではありませんでした。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兼太郎は刎起(はねお)きて、「お照か。まアお上り。お上り。」といいながら梯子段を駈下(かけお)りた。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
刎起(はねお)こして下を覗けば、年老いたる法師一人念仏詣りて余念無し。助け出して何者と問へば稚子法師阿信なりと答ふ。何故地下には居給ふぞと訊けば数年以前に入定はしたれど未だ往生出来ずと云ふ。
稚子法師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
泥舟は、夢中で刎起(はねお)きていた。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、夢にもしろ、いかにも堪(たま)らなくなると、やと叫んで刎起(はねお)きる、冷汗は浴(あび)るばかり、動悸(どうき)は波を立てていても、ちっとも身体(からだ)に別条はない。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と伊太郎は刎起(はねお)きた。「誰か来てくれ、鼬だ鼬だ!」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
刎起(はねお)きようとすると、いよいよメリ込むばかりです。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一杯になる胸を掻破(かきやぶ)りたいほど、私が案ずるよりあの女(こ)の容体は一倍で、とうとう貴方、前後が分らず、厭なことを口走りまして、時々、それ巡査(おまわり)さんが捕まえる、きゃっといって刎起(はねお)きたり
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おかみさんも、刎起(はねお)きて、突立(つった)ったにゃ突立ちましたが、腰がふらついて歩行(ある)けませんので、大黒柱につかまって、おしッこをするように震えています。手前は、その、……四這(よつんば)いに這いました。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と刎起(はねお)きる、と、起きた正面に、白い姿が、髴(ふつ)とある!
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)