出島でじま)” の例文
右に見えるのは出島でじまである。出島はあふぎの形をした、低い土地である。それが陸の方へ扇のを向けて、海の中へ突き出してゐる。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
応挙は、紅白の旗を翻した出島でじま蘭館らんかんを前景に、港の空にあらわれた入道雲を遠景にして、それらのオランダ船を描いている。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大砲たいほうをつくるための設計図せっけいずがほしいとか、出島でじまのオランダやしきをみたいとかいってくるひとがあります。それらのせわをするのも山本先生やまもとせんせい仕事しごとでした。
彼も、出島でじま蘭医館らんいかんへ遊学にやってから、まる五年、二十七歳になる。手紙を見ても、学業はすすんだようだ。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はじめに出した「潮来出島の真菰の中であやめ咲くとはしほらしや」の中にある出島でじまは直ぐ潮来町の真向いに見える小さい州の島で、よしや真菰が生えていた。
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
出島でじまに近い船繋場ふなつきばには、和船に混って黒塗三本マスト阿蘭陀オランダ船や、ともの上った寧波ニンパオ船が幾艘となく碇泊し、赤白青の阿蘭陀オランダの国旗や黄龍旗こうりゅうき飜々ひらひらと微風になびいている。
天井抜けうが根太抜けうが抜けたら此方の御手のものと、飛ぶやら舞ふやら唸るやら、潮来いたこ出島でじまもしほらしからず、甚句にときの声を湧かし、かつぽれに滑つて転倒ころ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
良寛さんの眼は、出島でじまの先を通つて、今長崎の港を出てゆくところの、一艘いつさうの帆船にとまつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
異国に対して厳酷であるとともに臆病おくびょうであった幕府は、当時長崎在留の異国人の住居を出島でじまくるわ内に禁制するとともに、一方丸山の遊女を毎夜そこにつかわし、はべらしめて
もと納屋助左衛門なやすけざゑもんと云ふ人の家だつたのださうです。南宗寺の智禅庵ちぜんあんの丘の下を東から堀割が廻つて流れて居まして海へ出るやうになつて居ます。その海辺は出島でじまと云ひます。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
例えば宇和島うわじま藩、五島ごとう藩、佐賀さが藩、水戸みと藩などの人々が来て、あるい出島でじま和蘭オランダ屋敷にいって見たいとか、或は大砲をるから図を見せてれとか、そんな世話をするのが山本家の仕事で
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そんなありさまで八幡社の境内けいだいまでたどりついた。池の中央にはちょっとした出島でじまがある。そこにはもと弁天堂があった。その跡が空地あきちになっているのである。その空地でゆっくり休んだ。