)” の例文
そして急にえとした山気さんきのようなものが、ゾッと脊筋せすじに感じる。そのとき人は、その急坂きゅうはんに鼠の姿を見るだろう。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ハアプ弾きの持つて居る美は丁度ちやうど今夜の空のやうなえとしたものであるなどと批判して思つたりなどもして居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
米国に近づくにつれて緯度はだんだん下がって行ったので、寒気も薄らいでいたけれども、なんといっても秋立った空気は朝ごとにえと引きしまっていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
しめやかなおとあめはなほつゞいてゐる。すこしばかりえとするさむさは、部屋へやなか薄闇うすやみけあつて、そろ/\と彼女かのぢようつゝ心持こゝろもちにみちびいてく。ぱつと部屋へやがあかるくなる。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
えして来ました。お入りくださいまし、閉めましょう」
草藪の中 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
むしむしする昼間ひるまの暑さは急にえとなって、にわかに暗くなった部屋へやの中に、雨から逃げ延びて来たらしい蚊がぶーんと長く引いた声を立てて飛び回った。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
孔の中はえとしていた。そして彼の元気を盛りかえらせるような清浄な空気の流れがあった。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
だが、下へ下りるほど、空気はえとして、この島のどこよりも暑さがしのぎよかった。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)