内証ないしよう)” の例文
旧字:内證
その春挙氏は画家ゑかきである。画が頼みたい人にそつと内証ないしようでお知らせする。氏の潤筆料に黄金こがねなどは無用の沙汰で、兎角は石の事/\。
山家やまがものには肖合にあはぬ、みやこにもまれ器量きりやうはいふにおよばぬが弱々よわ/\しさうな風采ふうぢや、せなかながうちにもはツ/\と内証ないしよう呼吸いきがはづむから、ことはらう/\とおもひながら、れい恍惚うつとり
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ああ彼女かのひとにのみ内証ないしようの秘めたる事ぞなかりける。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
内証ないしようだぞ
十五夜お月さん (旧字旧仮名) / 野口雨情(著)
夫人おくさん貴女あなたが芸術家ですつて。これは初めて伺ひました。結構な内職をお持ちですね。世間へは精々内証ないしようにして置きませうね。」
「そんな結構なものだつたら、君一人入つて内証ないしようにして置けばいぢやないか。」日野氏は苦味丁幾くみちんきのやうな言葉を相手の顔一杯に投げつけた。
実際気の毒な話だが、お祖母さんにだけはそつと内証ないしようにして置きたい。さもないと、腹を立てるかも知れないから。
もしかこの世界が私の手製だつたら、相馬君のやうな心掛のいゝ人には、そつ内証ないしようで打明けてやりたいものだ。
一寸内証ないしようで言つておくが、これは亭主にとつても同じ事で、女房に好かれようと思つたら、途中で自分の連合つれあひに出会つても、成るべくぽうを向いてゐる事だ。
岡山へつた鴈治郎梅玉一座は、中国から九州各地を打つて廻つて、最後に鹿児島へ入るさうだが、その鹿児島の興行だけは、俳優には内証ないしようで、今だに談話はなしが伏せてある。
青楼ちややへ遊びにゆく客といふものは、大抵見え坊で、内証ないしようはぴいぴいでも、懐中ふところには山をひ、やしきを購ひ、馬を購ひ、郵便切手を購ひ、おつりで若いをんな微笑わらひを購ふ位の財貨かね
折原知事と官房主事とに、こつそり内証ないしようで耳打ちをする。芸者の言つた「ムツゴロウ」とは、肥前の有明の海にしか棲まない、はぜに似た小魚で、知事と同じやうに色黒で出目である。
で、内証ないしようで世上の御夫人方おくさんがたに注意しておくが、物価が高くなつたからといつて、亭主のお膳から若芽薑だけは倹約しまつしないやうに願ひ度い。多くの場合亭主は将軍家より一層手腕家である。
内証ないしようで新村氏に耳打する。これが近頃流行のデモクラシイといふ奴さ。