兼々かね/″\)” の例文
矢張賣物だつたのかと、兼々かね/″\一分の疑を殘してゐた事がはつきりとわかつたが、それにしても餘り無雜作なのが腹立たしかつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
ことに、その引手茶屋ひきてぢややには、丁度ちやうど妙齡としごろになるむすめ一人ひとりあつて、それがその吉原よしはらるといふことを、兼々かね/″\非常ひじやうきらつてる。むすめまち出度でたいとふ。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
花月園内には京浜第一の、大舞踏場がある事は、兼々かね/″\知つてゐた。そして其処では水曜と土曜と日曜とに、いつもバンドが来て舞踏会が開かれてゐた。
私の社交ダンス (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
聞及び給ひ御家來におほせらるゝやう兼々かね/″\江戸表にもうはさありし天一坊とやら此度このたび下向と相見えたり此所にて出會ては面倒めんだうなり何卒行逢ゆきあはぬ樣にしたしと思召御近習きんじゆ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
日出雄ひでをや、おまへちゝとは、これから長時しばらくあひだわかれるのだが、おまへ兼々かね/″\ちゝふやうに、すぐれたひととなつて——有爲りつぱ海軍士官かいぐんしくわんとなつて、日本帝國につぽんていこく干城まもりとなるこゝろわすれてはなりませんよ。
今年こそは盆の賞與で夏服をつくらうと、兼々かね/″\望んでは居たのだが、洋服に廻す丈の餘裕が無く、結局我慢してしまつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)