其傍そのそば)” の例文
其傍そのそばぬひ子がそでの長い着物をて、例のかみを肩迄掛けてつてゐた。代助はぬひ子のかみを見るたんびに、ブランコにつた縫子の姿すがたを思ひす。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今の耳にもかわらずして、すぐ其傍そのそばなる荒屋あばらやすまいぬるが、さても下駄げたと人の気風は一度ゆがみて一代なおらぬもの、何一トつ満足なる者なき中にもさかずきのみ欠かけず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
兄の少年が手帳を出して、何か書きつけてゐると、其傍そのそばに、隣の老人はつて来て
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
そもそも始よりわたくし心には何とも思はぬ唯継ただつぐに候へば、夫婦の愛情と申候ものは、十年が間に唯の一度も起り申さず、かへつて憎きあだのやうなる思も致し、其傍そのそばに居り候も口惜くちをしく、つくづうとみ果て候へば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
対手あいてはり黙っているので、お杉は笑いながら其傍そのそばへ歩み寄った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
なかから矢が二本てゐる。鼠色の羽根と羽根のあひだが金箔でつよひかる。其傍そのそばよろひもあつた。三四郎は卯の花おどしと云ふのだらうと思つた。向ふがはの隅にぱつとを射るものがある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其傍そのそばには冬子が看護していた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)