僻陬へきすう)” の例文
そして今年の七月十四日に「全計画の成否を決定すべき一弾」がニューメキシコ州僻陬へきすう荒蕪地こうぶちに建てられた鉄塔の上につるされるまでは
原子爆弾雑話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
広瀬河畔の晩翠を知らむと欲せば、必ずしも之を詩を知る者に聞くを要せざる也。僻陬へきすう村夫子そんふうし猶且なほかつ彼が名を記して幸福なる詩人と云ふ。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
実隆の交遊広く、雷名の僻陬へきすうまで及んでおったことは、日本のはてから彼を尋ねて来る者の多かったのでも推すことができる。
ただその中に山間僻陬へきすうの地に居ったり、その他の事情によって、早く皇化に染むの機会を有しなかったものは、往々にして落伍者となりました。
予が村は僻陬へきすうにて、日用品すら急にあがなうことあたわざるくらいの土地なるが、明治十七年十月某夜、村内の某老爺ろうや来たり、予にいいて曰く
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
このことだけでも不思議な窯である。凡てを自給せねばならぬ山間僻陬へきすうの地理が、このことを長く要求し、今もその習慣が続いているのであろう。
日田の皿山 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
しかし、今では僻陬へきすうの寒村になってしまった。維新後、上野から碓氷峠を越え、長野、直江津と鉄道が敷かれては、この三国峠など越える人はいない。
猿ヶ京 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
これは、勿論、一面の、しかも重要な事実であるから、民俗、特に僻陬へきすうの地のそれが、上代人の生活を知る上について参考となるものであることには、異議がない。
とにかく——この僻陬へきすう、荒原の間に、こんな貴婦人が住んでいるはずはないのに、どういう種類のお方だろうと、お雪ちゃんは不審を重ねつつ相対していました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
僻陬へきすうの故郷でも、今はあの頃の風習は影が薄くなつて、遠海へ出稼ぎに行つてゐる漁夫の帰郷の季節を盂蘭盆と名づけるに過ぎないらしい。七夕の竹も立てなくなつた。
月を見ながら (新字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
支那の僻陬へきすうの地の農民たちは、日清戦争があったことも、しんみんに取ってかわったことも知らずに、しかし、軍隊の略奪には恐ろしく警戒して生きている、──こういうことは
明治の戦争文学 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
それからクロンボルグの古城とをつ、伝説そのもののように絵画的な僻陬へきすうの小市だ。
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
按ずるに朽木氏の聞き伝へた所は、丁巳の流言が余波なごり僻陬へきすうに留めたものであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
したがって今でも僻陬へきすうの地には、生児制限の弊風が往々にして認められる。或る地方では明治三十九年の丙午ひのえうまの年に生児が少かったという事実もある。
特殊部落の人口増殖 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
アストン博士は昨年の日食観測に北海道へこられたので、私はまる一週間上斜里のような僻陬へきすうの地で不自由な生活を共にしたという思わぬ機会に会ったのである。
わが伊那の地が山間の僻陬へきすうにありながら、尊王の歴史に古い光を持っていることです
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
秋なれば夜毎に、甍の上は重き霧、霧の上に月照りて、永く山村僻陬へきすうの間にありし身には、いと珍らかの眺めなりしか。一夜興をえて匇々さうさう筆を染めけるものすなはちこの短調七れんの一詩也。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そこへ行くと北方は中央の都からは遠い僻陬へきすうの地であるため、影響が薄いのです。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
僻陬へきすうの地に先住民族がながく取り遺されるという事は、今さら事新しく言うまでもないところで、現に台湾東部の山地には、近くその実際を見るのである。
「ケット」と「マット」 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
歴史を振り返れば、僻陬へきすうのこの国にもかつてあった窯の名を二、三は数え得るであろう。十数年前までは弘前在ひろさきざい悪戸あくど窯があった。色は寒いが、並釉に白の「いっちん」で見事な絵を描いた。
現在の日本民窯 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
奥羽の如くその地が僻陬へきすうであり、住民素樸にして、村方警固の必要も少く、各自相たすけて葬儀その他の業をも執り行ったような地方には、特にエタを置くの必要がなく
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
まして僻陬へきすうの地にあるそれらのものを見出すことはほとんど望み難いからです。それに大部分はつまらない作として物置のような所に放置せられ、守る僧もなく虫のむに任せてあるからです。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)