保名やすな)” の例文
そしてわか牝狐めぎつねが一ぴき、中からかぜのようにんでました。「おや。」というもなく、きつね保名やすなまくの中にんでました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
が、今、そうして保名やすな狂乱もどきにボンヤリ突っ立ってる喬之助には、玄蕃の剣眼けんがんから見て、正に一りんの隙もないのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
暗やみのだんまりは見馴れているが、雪の中のだんまりは珍らしいというのである。浄瑠璃じょうるりは「雪月花」で、団十郎の鷺娘さぎむすめ保名やすなも好評であった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「菊五郎は先月神戸の松竹へ来たよって見に行ったけど、東京や大阪で見るようなことあれへなんだ。保名やすなをやったけど、延寿太夫えんじゅだゆうも出えへんし、………」
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
京子は、テーブルの上のグラフィックを開けて菊五郎の「保名やすな」の写真を見ながらいった。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
もちっとあとのことで、九女八はこの大阪から帰ってから後、大正二年の七月に、浅草公園の活動劇場しばいみくに座で、一日三回興業に、山姥やまうば保名やすなを踊り、楽屋で衣裳いしょうを脱ごうとしかけて卒倒し
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
同倶樂部の素人しろうと試演會があつた時——その時、けふも來てゐる理學士が研究の爲めに習つてる踊りのうちに「保名やすなの狂亂」を踊つたが、——義雄の紹介も待たないで、いつもの出しや張り根性で
こうしてせっかくれかけたきつね横合よこあいからられてしまったのですから、悪右衛門あくうえもんはくやしがって、やたらに保名やすなにくみました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかも去年の桜どき——とんだ保名やすなの物狂いですね。なにしろ、そう強情ごうじょうにおぼえていられちゃあ、とてもかなわない。こうなれば、はい、はい、申し上げます、申し上げます。
半七捕物帳:19 お照の父 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
保名やすな家来けらいのこらずたれて、保名やすな体中からだじゅう刀傷かたなきず矢傷やきずった上に、大ぜいに手足てあしをつかまえられて、とりこにされてしまいました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)