価値かち)” の例文
旧字:價値
主人はこの結論をえたにかかわらず、さらば自分の生活にどれだけの価値かちがあるかと思うてみて、やはりわけがわからなくなった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
成功不成功は人格の上になんの価値かちもない。人は多くそうした標準で価値をつけるが、私はそういう標準よりも理想や趣味の標準で価値を
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
悪なるものを自分は好むということを認めたもので、これは心の主観的作用しゅかんてきさよう事物じぶつ客観きゃっかん価値かちと一致しないゆえである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「千里の馬ありといえども、伯楽はくらくなきをいかにせん、千里のだちょうありといえども、きみらには価値かちがわからない」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
そこに僕と云ふものゝ存在の価値かちを認めるんだ。君はたゞ考へてゐる。考へてる丈だから、あたまなかの世界と、あたまそとの世界を別々べつ/\建立こんりうして生きてゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そこへ心を傾けないものは非国民でさえあった時世じせいの動きは、親に無断で学徒兵をこころざせば、そしてそれがひとり息子であったりすれば英雄の価値かちはいっそう高くなった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「このごろは、日本にっぽんでも、いい時計とけいができるから、そのうち、あたらしいのをってやる。」と、いって、さすがに、ちちは、いつまでも価値かちのないものに、こだわるようすはなかったのです。
時計と窓の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかしひるになると、また彼をばかにすることばかり考えて、感謝かんしゃの様子などはすこしも見せなかった。その上、クリストフはまだちいさかったので、善良ぜんりょうであるということの価値かちが十分にわからなかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
霊光れいこう一点 価値かちきん
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
英語に valueヴァリュー という字がある。近ごろの経済学者はこれを価値かちと訳し、これに lessレッスくわうればあたいなきもの、二そくもんあたいもない、つまらぬものという意になる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
たゞ御母おつかさんは、田舎いなかの相場で、かね価値かちけるから、三拾円が大変おもくなるんだね。何でも参拾円あると、四人の家族が半年つてけるといてあつたが、そんなものかな、君
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
このことばをくと、ぼくは、外国品がいこくひんだけに、かえって、不安ふあんがしました。いくら宝物たからもののようにだいじにしても、時計とけいであるかぎり、時間じかんがくるえば、まったく価値かちはなくなるとおもったからです。
時計と窓の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)