井然せいぜん)” の例文
この結論に達するまでの理路は極めて井然せいぜんとしていたが、ツマリ泥水稼業どろみずかぎょうのものが素人しろうとよりは勝っているというが結論であるから
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
堀割に沿うて造られた街衢がいく井然せいぜんたることは、松江へはいるとともにまず自分を驚かしたものの一つである。
松江印象記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
共同墓地と名にはいうが、その地面には井然せいぜんたる区画があって、毎区に所有主がある。それが墓の檀家である。そして現在の檀家のうちには池田という家はない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
まん丸な木や、円錐形の木や、三角の芝生や、五角の花畑などが幾何学的に井然せいぜんとして居るのは、子供にも俗人にも西洋好きのハイカラ連にも必ず受けるであらう。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
笹野新三郎の言うことは理路井然せいぜんとしておりました。銭形の平次、捕物にかけては天下の名人ですが、大名方の消息は、与力の笹野新三郎ほどは読んでいなかったのです。
しかかれつてるのは幾屈曲いくくつきよくをなして當時たうじである。かれ何時いつにか極端きよくたん人工的じんこうてき整理せいりほどこされた耕地かうち驚愕おどろきみはつた。かれ溝渠こうきよ井然せいぜんとしてるのに見惚みとれてしまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
黒田権少属、熊城史生出デヽ郛門ふもんニ迎フ。コノ地原ハ仙台ノ支族伊達安芸あきノ居所ニ係ル。街衢がいく井然せいぜんトシテ商估肆しょうこしつらネ隠然トシテ一諸侯ノ城邑ノ如シ。今春土浦ノ藩士朝命ヲ以テ来リ鎮ス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
もとより、理路井然せいぜんとして、少しの不自然もないように出来ればそれに越したことはないけれど、作品の芸術的効果を無視してまで、「理」に忠実なろうとすることは、私の取らない所である。
「心理試験」序 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
街衢がいくの地割の井然せいぜんたるは、幾何學の圖をひらきたる如く、軒は同じく出で、はしごは同じく高く、家々の並びたるさまは、檢閲のために列をなしたる兵卒に殊ならず。清潔なることはいかにも清潔なり。
井然せいぜんたる山下さんかの村落に
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
質問いまだ終らざるに早く既に不折君の滔々とうとうとして弁じ初むるを見ん、もし傍より妨げざる限りは君の答弁は一時間も二時間も続くべく、しかもその言ふ所条理井然せいぜんとして乱れず
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
茶店の老爺の話は思ひの外井然せいぜんとして居ります。
茶店の老爺の話は思いの外井然せいぜんとしております。