世路せいろ)” の例文
彼が身にめてきた世路せいろの盲人の生き難いすがたから常に考えさせられていたものを、将軍家へ献策して、その結果、ひとつの盲官組織と
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前年さきのとし江戸にありし時右の事をさき山東翁さんとうをうにかたりしに、をういはく世路せいろなだ総滝そたきよりも危からん、世はあしもとを見てわたるべきにやとてわらへり。
人情は暗中にやいばふるひ、世路せいろは到る処に陥穽かんせいを設け、陰に陽に悪を行ひ、不善をさざるはなし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼はある場合においては、他人の喧嘩を買うを辞せず、如何なる場合においても、自家の意をげ志を屈するが如きことなし。彼は世路せいろの曲線的なるに関せず、みずから直線的に急歩大蹈たいとうせり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
世路せいろにほこるいきほひも
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
世路せいろのけわしさを知ってないこの仲時の不覚だった。罪のすべてはわしにある。わしは部下にあやまりたい! みなここに呼びあつめてくれ
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世路せいろにほこるいきほひも
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
あれほどな苦労と経験を世路せいろに積んだ老武士にしても、迷えば迷うものとみゆる。……ああ風浪よ、伯耆どのの舟路ふなじに、せめてはつらく当るな
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はことし五十三歳の武将としては千軍万馬の往来を積み、人間としても、世路せいろ紆余曲折うよきょくせつをなめ尽して来ている。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たたいたこともございますが、正成殿にはお会いかなわず、空しく世路せいろを浪々しておるうち、日野朝臣のお口ききにて、今は石川の散所ノ太夫義辰殿の許に身を
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これらの女性が世路せいろに耐えてきたたたかいも、戦野せんやの男どもに劣るものでなく、しかもこんな弱い群れは、武門という武門や公卿の深窓からもみな“時の波”にただよい出されて
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この仮面めん打ちの老翁にしろ、語らせれば、人間の子、その生い立ちから、この年まであるいてきた世路せいろの途中では、さまざま、涙なくては語れぬような過去も持っているかもしれない。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
公家くげという地主や、武家天下の地頭制の地割りなども一定された今では、かつての如き、土地の斬り取り強盗もできないところから、自然、世路せいろに充満していて、叡山えいざんみたいな法城にすら
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、家康は、そう情懐にのみふける者ではない。彼がしきりに、本多正信を近づけているのは、正信の流浪中に学んだ諸州の実状やら、世路せいろの苦労ばなしに、得るところが多かったからである。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)