不知しら)” の例文
きふひくくなりますからをつけて。こりや貴僧あなたには足駄あしだでは無理むりでございましたか不知しらよろしくば草履ざうりとお取交とりかまをしませう。)
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この情実を話すまいとすると、ただの女と不知しらを切る当座の嘘はきたくない。嘘を吐くまいとすると、小夜子の事は名前さえも打ち明けたくない。——小野さんはしきりに藤尾の様子を眺めている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と云って不知しらを切った。叔父はさすがに腹をたてた。
寄席の没落 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あめ不知しらときしもあきのはじめなり、洋燈ランプあぶらをさすをりのぞいた夕暮ゆふぐれそら模樣もやうでは、今夜こんや眞晝まひるやう月夜つきよでなければならないがとおもうちなほ其音そのおとえずきこえる。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「なに、通じても、不知しらを切ってるんだよ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あめれたり、ちやうど石原いしはらすべるだらう。母様おつかさんはあゝおつしやるけれど、わざとあのさるにぶつかつて、またかはちてやうか不知しら。さうすりやまた引上ひきあげてくださるだらう。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)