不承不承ふしょうぶしょう)” の例文
男たちは、首領の青ざめた顔を、不審らしくジロジロと眺めていたが、また不承不承ふしょうぶしょうに、廊下の向こうへと引き返して行こうとした。
黒蜥蜴 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
老番頭の太兵衛たへえもどうすることも出来ません。不承不承ふしょうぶしょう下男に言い付けて、奉公人の部屋から、古い竹行李たけごうりを一つ持って来させました。
洋一は誰かに聞かされた、そんな話を思い出しながら、しばらくのあいだ不承不承ふしょうぶしょうに、一昨年いっさくねんある呉服屋へ縁づいた、病気勝ちな姉のうわさをしていた。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そういわれて、キンチャコフはついかぶといだ。彼は不承不承ふしょうぶしょうに、逞しい形のピストルをポケットの中に収いこんだ。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
少年は不承不承ふしょうぶしょう、五郎に並んで綱に腰をおろした。五郎は内ポケットから金を取り出した。百円玉を少年に渡した。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
と、おやじは、なかば不承不承ふしょうぶしょうに、裏の水ぎわから河岸かしつづきの竹林をのぞんで、何か、指合図ゆびあいずをしております。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それでもお徳の不審はまだ晴れないので、旦那かおかみさんを起こしてくれと又頼むと、寅次は不承不承ふしょうぶしょうに奥へはいったが、やがて女房のお新を連れ出して来た。
半七捕物帳:44 むらさき鯉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一日じゅう警戒をつづけ、夜になると不承不承ふしょうぶしょうお祈りをしてわれわれ自身を不確かさにゆだねる。
またくだらないことで呼ぶのだろうと、三度に一度はつい聞かないふりをしているとか、不承不承ふしょうぶしょうに返事をするようなことは、まず何よりも子供にきらわれるはじめです。
女中訓 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
かれは不承不承ふしょうぶしょうにわたしの言うことを聞いたが、しかしひどくふくれっつらをして、目をじっと入口に向けていた。よほどしつっこい、いったん思い立ったことをわすれない犬であった。
小僧は不承不承ふしょうぶしょうにまた奥へ行きましたが、小さな紙包を一つ持って出て来て
葉子はいい潮時を見計らって巧みにも不承不承ふしょうぶしょうそうに倉地の言葉に折れた。そして田島のじゅくからいよいよ妹たち二人ふたりを呼び寄せる事にした。同時に倉地はその近所に下宿するのを余儀なくされた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
波子は、ええとうなずいたが、不承不承ふしょうぶしょうのそれで
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
事務員は、又しても、守の姿を、頭のてっぺんから、足の先までジロジロと眺めてから、不承不承ふしょうぶしょうに奥へ消えて行った。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
不承不承ふしょうぶしょうに相手を見返りながら、うるさそうに「何だい。」と答えると、泰さんは急ぎ足に追いついて、「君は今、車へ乗って通った人の顔を見たかい。」
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
奮然張飛は反抗しかけたが、玄徳になだめられて、不承不承ふしょうぶしょう、出ていった。嘲笑いながら、出陣した。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
船頭が不承不承ふしょうぶしょうに棹を下ろすと、犬はヒラリと舟の中へ飛んで乗りました。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
平次は不承不承ふしょうぶしょうの顔をネジ向けました。
こうなっては、本間さんもとにかく一しょに、立たざるを得ない。そこでM・C・Cをくわえたまま、両手をズボンのポケットに入れて、不承不承ふしょうぶしょうに席を離れた。
西郷隆盛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
屋形船やかたには、もう斧四郎も、浜中屋のお菊ちゃんも来て待っているというので、露八は、不承不承ふしょうぶしょう
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お母さんは最初は気が進まぬ様子であったが、こうでもしなければ怪獣の襲撃を逃れるすべはないと説かれて、不承不承ふしょうぶしょう承諾しょうだくをあたえた。信頼しきっている神谷青年の勧めをしりぞけかねたのだ。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「どうも困ったものだよ。われわれの兄貴は人が好すぎるね。ずるい奴は、その弱点へつけ込むだろう。……まして、呂布などを出迎えに出るなんて」と、不承不承ふしょうぶしょう従った。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私はこの記者から前にも一二度不快な印象を受けた覚えがあるので、不承不承ふしょうぶしょうに返事をした。
沼地 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こうまでいわれては、矮虎わいこ不承不承ふしょうぶしょう、指をくわえてあきらめるほかはない。もちろん燕順も白面郎も切にそれをすすめ、気まずいながら、事はやっと一段落を見たかたち。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また成程なるほどそう云う気が起りでも致しませんでしたら、昇る気づかいのない竜を待って、いかに不承不承ふしょうぶしょうとは申すものの、南大門なんだいもんの下に小一日こいちにちも立って居る訳には参りますまい。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「いや、それほど何も、大した事ではございません。」内蔵助は、不承不承ふしょうぶしょうに答えた。
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
周馬も、一時、カッとした疳筋かんすじの血が下がってみれば、もとより、好むところの斬合いではないので、不承不承ふしょうぶしょうに、イヤ、むしろホッとした気持で、お十夜の扱いに任せることになった。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
というと、不承不承ふしょうぶしょう
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)