上刻じょうこく)” の例文
早朝上刻じょうこくから、お呼び寄せの大太鼓が、金線を溶かしたお城の空気をふるわせて、トーッ! トウトーットッとおやぐら高く——。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「なに、手はずに変わりがあるものかね。集まるのは羅生門らしょうもん、刻限は上刻じょうこく——みんな昔から、きまっているとおりさ。」
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
衆人しゅうじんめぐり見る中へ、其の姿をあの島の柳の上へ高くあらわし、大空に向つてはいをされい。祭文さいもんにも歌にも及ばぬ。天竜てんりゅう、雲をり、らいを放ち、雨をみなぎらすは、明午みょうごを過ぎてさる上刻じょうこく分毫ふんごうも相違ない。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もう払暁ふつぎょうに近い上刻じょうこく(午前三時半)頃になっていた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし彼は膝を進ませると、病人の耳へ口をつけるようにして、「御安心めされい。兵衛殿の臨終は、今朝こんちょうとら上刻じょうこくに、愚老確かに見届け申した。」
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
謡曲ようきょく羽衣はごろもの一節、がらになく風流なところのある男で、大迫玄蕃が、余念なくおさらいにふけっていると、夜はいぬ上刻じょうこく、五ツどき、今でいう午後八時だ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
巫女 ちょうどや——うし上刻じょうこくぞの。(手綱たづなを取る。)
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それが、その朝のたつ上刻じょうこく(七時)ごろ。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるいぬ上刻じょうこく頃、数馬は南の馬場ばばの下に、うたいの会から帰って来る三右衛門を闇打やみうちに打ち果そうとし、かえって三右衛門に斬り伏せられたのである。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
上刻じょうこくでございます」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふけやすい夏のは、早くも上刻じょうこくに迫って来た。——
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)