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ゑんみやうじ
圓明寺の
杉が
焦げた
樣に
赭黒くなつた。
天氣の
好い
日には、
風に
洗はれた
空の
端ずれに、
白い
筋の
嶮しく
見える
山が
出た。
年は
宗助夫婦を
驅つて
日毎に
寒い
方へ
吹き
寄せた。
其内薄い
霜が
降りて、
裏の
芭蕉を
見事に
摧いた。
朝は
崖上の
家主の
庭の
方で、
鵯が
鋭どい
聲を
立てた。
夕方には
表を
急ぐ
豆腐屋の
喇叭に
交つて、
圓明寺の
木魚の
音が
聞えた。
日は
益短かくなつた。