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ちうしんてん
只遙に
隔つた
村落の
木立の
梢から
騰る
炊煙が
冴えた
冷たい
空に
吸ひこまれて
居るのみで、
其の
小さな
船が
中心點をなして
勘次の
目には一つも
動く
物を
見なかつた。
各自の
直上を
中心點にして
空に
弧を
描いた
其の
輪郭外の
横にそれから
斜に
見える
廣く
且つ
遠い
空は
黄褐色な
霧の
如き
埃の
爲に
只熖に
燒かれたやうである。
卯平は
自分の
小屋に
身を
窄めた。
けれど
私は
如何いふものか、
其に
触つて
見る
気は
少しもなく、
唯端の
喰出した、一
筋の
背負揚、それが
私の
不安の
中心点であつた。