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たばた
田端だの、
道灌山だの、
染井の墓地だの、
巣鴨の監獄だの、
護国寺だの、——三四郎は
新井の
薬師までも行った。
田端で
停車した
時、
園は
立上つて、
其の
夕靄にぽつと
包まれた、
雨の
中なる
町の
方に
向つて、
一寸会釈した。
足を
運び
給はゞ
忍ぶが
岡の
緑樹の
朝つゆ、
寐間着のまゝにも
踏み
給ふべし、
螢名所の
田畑も
近かり、
只天王寺の
近き
爲に、
蚊はあまり
少なからねど、
吹き
拂ふに
足る
風十分なり
その中には春木少年の顔が
交っていた。その外に、
小玉君、
横光君、
田畑君の三少年がいた。