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すゐはう
與吉の
横頬は
皮膚が
僅に
水疱を
生じて
膨れて
居た。
彼は
其の
日の
機嫌が
惡かつた。
南の
女房は
其の
水疱に
頭髮へつける
胡麻の
油を
塗つてやつた。
米や
麥や
味噌がそれでどうにか
工夫が
出來た。
彼は
斯うして
命を
繼ぐ
方法が
漸と
立つた。二三
日過ぎて
與吉の
火傷は
水疱が
破れて
死んだ
皮膚の
下が
少し
糜爛し
掛けた。
水疱はいつか
破れて
糜爛した
患部を、
油は
見るから
厭はしく
且つ
穢くして
居た。
死んだ
細胞の
下から
鮮かに
赤く
見え
始めた
肉芽は
外部の
刺戟に
對して
少しの
抵抗力も
持つて
居ない
細胞の
集りである。