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こゝろあた
紀念同樣と云しも謂れ
有筋なりと思ひしかば忠八は膝を進め
御亭主只今の物語り拙者少し
心當り有苦しからずば其印籠を
鳥渡拜見は成間敷哉と云に亭主は其は何より
易き事
也とて下女を
呼て其印籠を
『
何か
此事に
就いてお
心當りはありませぬか。』と
春枝夫人に
問ひかけた。
と
父が
以前持帰つた、
其の
神秘な
木像の
跡の、
心当りを
捜す
処、——
気にも
掛けないまで
忘れて
了つて、
温泉宿の
亭主を
呼んで、
先づ
尋ねたのが、
世に
伝へた
双六谷の
事だつた。
坊さんは一
向心当りがないと
云ふやうな
面持をしながら、それでも
笑顔をつくり