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あさふくろ
東京に
帰つて
後、
呼べば
応へて
顕はるゝ、
双六谷の
美女の
像を、
唯目を
開いて
見るやうに、すら/\と
刻み
得た。
麻袋の
鑿小刀は、
如意自在に
働く。
坊主は
懐中の
輪袈裟を
取つて
懸け、
老爺は
麻袋を
探つた、
烏帽子を
丁と
冠つて、
更めてづゝと
出た。
あの
空が
紫立つてほんのり
桃色に
薄く
見えべい。——
麻袋には
昼飯の
握つた
奴、
余るほど
詰めて
置く、ちやうど
僥幸、
山の
芋を
穿つて
横噛りでも
一日二日は
凌げるだ。
遣りからかせ、さあ、ござい。