てい)” の例文
新字:
漸く日光へ、其れから電車を利用して馬返へ來ると、其の邊の紅葉が眞盛なので、山奧へ行つて林間酒を暖めるていの風流はあきらめる。
黒岩山を探る (旧字旧仮名) / 沼井鉄太郎(著)
鼻筋はなすぢ象牙彫ざうげぼりのやうにつんとしたのがなんへば強過つよすぎる……かはりには恍惚うつとりと、なに物思ものおもてい仰向あをむいた、細面ほそおも引緊ひきしまつて
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つうじけるに名主も駈來かけきた四邊あたり近所きんじよの者も追々おひ/\あつまり改め見れば何樣いかさま酒に醉倒ゑひたふ轉込まろびこみ死したるに相違さうゐなきていなりと評議一決し翌日よくじつ此趣このおもむきを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
平常つね美登利みどりならば信如しんによ難義なんぎていゆびさして、あれ/\意久地いくぢなしとわらふてわらふてわらいて、ひたいまゝのにくまれぐち
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
禮儀から云へば前者の方だが、返事を書くことを億劫に思ふ人もあるし、それよりもていよく面會を謝絶する餘地を與へるといふおそれがあつた。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
森本春雄からので、義雄はそれを顫ひつくほど熱心な態度で讀んで見たが、それを卷き納める時は、失望のていに見えた。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
けふは長屋の井戸がへにて、相長屋の願人坊主、雲哲、願哲の二人も手傳ひに出てゐるていにて、いづれも權三の家の縁に腰をかけて汗をふいてゐる。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
三人のうちで、一番たけの高いお山と云ふ女がひよい振顧ふりむくと、『可厭いやだよ。誰かと思つたらお大なんだよ。』と苦笑にがわらひしながらばつが惡いと言ふていで顏を見る。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そして何時ものやうに上眼遣うはめづかひでヂロリ/\學生の顏を睨𢌞ねめまはして突ツ立ツてゐるのであるから、學生等は、畏縮といふよりはいさゝか辟易のてい逡巡うぢうぢしてゐる。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
かれあにいへ厄介やくかいになりながら、もうすこてば都合つがふくだらうとなぐさめた安之助やすのすけ言葉ことばしんじて、學校がくかう表向おもてむき休學きうがくていにして一時いちじ始末しまつをつけたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
サンプソンとエブラハムとけんいてたゝかふ。ベンヺーリオーこのていきたり、けんき、ってはひる。
何を訊いても噛み付きさうで、手掛りを引出すどころの沙汰ではなく、散々のていで引揚げてしまひました。
大島仁藏翁おほしまじんざうをう死後しご權藏ごんざう一時いちじ守本尊まもりほんぞんうしなつたていで、すこぶ鬱々ふさいましたが、それも少時しばしで、たちまもと元氣げんき恢復くわいふくし、のみならず、以前いぜんましはたらしました。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
相手は何處迄も御人好の御坊ちやまの、泣き出し相に、なさけない顏でおろおろして居るまだるつこさ、芳公の啖呵も折角、響が來ないので、聊か之も張合なさの悄氣しよげてい
二十三夜 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
夫人は食堂の長椅子に、はたと身をせ掛け、いたくうんじたるていにて、圓く肥えたる手もて頬を支へ、目を食單もくろくに注げり。「ブロデツトオ、チポレツタ、フアジヲロ」とか。
その樣子ときたらとても御想像も及びませんよ! まあジュピターよろしくのていでふんぞり返ってるんですからねえ! 僕は自然、あの人の態度が氣にくわなくなったという氣持を
僕はあなたがちつとも他人の言葉を容れないていをよそほうてゐるから男は控へてゐるんだと、僕は言つてやつたのだ。多少、女はやはり氣難しいところを折々外して見せる必要がある。
末野女 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
先のこゝろよげなる氣色けしきに引きかへて、かうべを垂れて物思ものおもひのていなりしが、やゝありて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
とほりかゝつた見知越みしりごしの、みうらと書店しよてん厚意こういで、茣蓙ござ二枚にまいと、番傘ばんがさりて、すなきまはすなか這々はふ/\ていかへつてた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其方儀天一坊身分しかと相糺さず萬事ばんじ華麗くわれいていたらく有しを如何いかゞ相心得居申候やうつたへもせず役儀やくぎをもつとめながら心付ざる段不屆に付退役申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
然し乍ら、愈々涸澤からさはの窪から傾斜の増した林の中へ移つて、暗中摸索のていで頂上を目懸けた。其の最後の上りが高距凡そ百米もあつたであらうか。
黒岩山を探る (旧字旧仮名) / 沼井鉄太郎(著)
「俺の方は散々のていさ。園山の坊ちやんが、來て泊つて居ることは判つたが、あとはなんにも判らねえ」
其處でいらだつ心を押付けて、沈思默想しんしもくそうていとなる。と謂ツても彼は、何時まで此の問題にのみ取つ付いて、屈詫くつたくおほい頭腦を苦しめてゐる程の正直者しやうぢきものでは無かツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
わたしくかろうと此子このこめんじていてくだされ、あやまりますとていてけども、イヤうしてもかれぬとて其後そのごものはずかべむかひておはつ言葉ことばみゝらぬてい
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「今のところ、丸で失敗のてい、さ。」かう云つて義雄は直ぐありのままをぶちまけてしまつた。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
半分はんぶんえる土間どまでは二十四五のをんな手拭てぬぐひ姉樣ねえさまかぶりにしてあがりがまちに大盥おほだらひほどをけひか何物なにものかをふるひにかけて專念せんねんてい其桶そのをけまへに七ツ八ツの小女こむすめすわりこんで見物けんぶつしてるが
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
重景、今更いまさら御邊ごへん面合おもてあはする面目もなけれども、我身にして我身にあらぬ今の我れ、のがれんに道もなく、厚かましくも先程よりのていたらく、御邊ごへんの目には嘸や厚顏とも鐵面とも見えつらん。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
だいぢゃう 同處どうしょ墓場はかば。(此裡このうちにカピューレット代々だい/″\廟所べうしょあるてい)。深夜しんや
怯氣おぢけてい、折折無氣味さうに、眼を轉じて前後を竊視する。
二十三夜 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
(とは云ひながら、五郎は猶不安のていにてたゝずむ。)
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
などと、猫撫聲ねこなでごゑで、仰向あふむけにした小兒こども括頤くゝりあごへ、いぶりをくれて搖上ゆりあげながら、湯船ゆぶねまへへ、トこしいたていに、べつたりとしやがんだものなり。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ころし其血にて自分は盜賊たうぞく切殺きりころされしてい取拵とりこしらへ夫より九州へ下り肥後ひご熊本くまもとにて加納かなふ屋利兵衞といふ大家に奉公し七百兩餘の金子をかすめ夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
中年女の覺悟のていではなく、窓の方二間も先へ放り出した短刀と共に、一つ/\が疑問の種です。
銭形平次捕物控:282 密室 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
またあのことすかとむねなかもやくやして、なにともはれぬやな氣持きもちなり、さりながらことごとにおこりつけるわけにもゆかねば、るだけはらぬていをして、平氣へいきをつくりて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かう云ふ話があつた時は、義雄とお鳥とが大工の家をていよく斷られて、假りにその隣りの辯護士のおやぢとその妾とがその間に出來た一人の子と共にゐる家の二階へ移つてゐた。
オックスホード出身しゆつしん紳士しんし年長者ねんちやうじやだけにわけても兒玉こだまところかんじたていで。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
いきせはしく、『むゝ』とばかりに暫時しばしは空を睨んで無言のてい
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
背負ひて出で、このていをみて割つて入る。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
ていでござります。へい、御見忘おみわすれは御道理ごもつともで。いや、うからつきし、意氣地いくぢもだらしもござりません。貴下あなた御成人遊ごせいじんあそばしましたな。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一方では伊賀井の殿樣の奧方——彌生の方は、御主人の氣違ひ沙汰に取逆上とりのぼせて、これは本當に氣が變になり、一と間に押し込められて、ていのいゝ座敷牢暮しをするやうになつた。
その校長がわが國では有名な女優であつて、年中どんな忙しい生活をしてゐるのかも知らないお鳥は、不在で分らないと云ふ返事を聞いただけで、それがていのいい斷りではないかとあやぶんだ。
わらときわらひますから、心任こゝろまかせにしていてくだされと、ひて流石さすがうちつけにはうらみもへず、こゝろめてうれはしけのていにてあるを、良人おつとあさからずにかけて、何故なぜそのやうてばるはふぞ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しからばでよ。あへなんぢくるしめてなぐさみにせむ所存しよぞんはあらず」とゆるたまふに、よろこび、おそれ、かごよりはふはふのていにてにじりでたり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
増田屋のかゝうどで、近頃來たばかりの浪人者——用人棒といふにしては人柄の良い、椿三千麿つばきみちまろといふ若い武家が、外から歸つて來て、庭木戸の外から此ていを見た、月が良いから
氷峰は後ろ鉢卷きでおほ悶えのていだ。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
「おほせまでもさふらはず、江戸表えどおもてにて將軍しやうぐん御手飼おてがひ鳥籠とりかごたりとも此上このうへなんとかつかまつらむ、日本一につぽんいちにてさふらふ。」と餘念よねんていなり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
平次は障子を押しあけて、そのていたらくを灯にすかし乍ら、ひどく不機嫌さうです。
屋根やねいても、いたつても、一雨ひとあめつよくかゝつて、水嵩みづかさすと、一堪ひとたまりもなく押流おしながすさうで、いつもうしたあからさまなていだとふ。——
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
八五郎はまことに散々のていです。
しま羽織はおり筒袖つゝそでほそた、わきあけのくちへ、かひなげて、ちつさむいとつたていに、兩手りやうて突込つツこみ、ふりのいたところから、あか前垂まへだれひもえる。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)