となり)” の例文
この先生せんせいもどちらかといえば、あまりひと交際こうさいをしない変人へんじんでありましたが、こんなことから、となりおとこはなしをするようになりました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いとな七日々々なぬか/\追善供養つゐぜんくやうも心の及ぶだけはつとめしが何分男の手一ツでをさなき者の養育やういく當惑たうわくひるは漸く近所きんじよとなりもらちゝなどしよる摺粉すりこ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひろうちでないから、ついとなり部屋へやぐらゐにゐたのだらうけれども、ないのとまるちがはなかつた。このかげやうしづかなをんな御米およねであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
同時にすぐとなりのベンチに腰をかけてゐる書生が二人、「見ろ/\、ジンゲルだ。わるくないなア。」とつてゐるのさへ耳にした。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
唯潔癖な彼女は周囲の不潔に一方ひとかたならずなやまされた。一番近いとなりが墓地に雑木林ぞうきばやし、生きた人間の隣は近い所で小一丁も離れて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
劣等れっとうの雲雀は戻って来る時あやまってとなりの籠へ這入ったり甚しきは一丁も二丁も離れた所へ下りたりするが普通ふつうはちゃんと自分の籠を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
するととなりにいた沢村さんが、大きな声で、「青大将なのよ」とぼくのいちばんきら綽名あだなを呼んでから、気持よさそうに笑い出しました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
やはり「ふ」の字軒の主人の話によれば、となりの煙草屋のかみさんが一人、当夜かれこれ十二時頃に共同風呂へはいりに行きました。
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこでおじいさんは、こういうわけでおどりをおどったら、あとでしちにられたのだといって、くわしいはなしをしました。おとなりのおじいさんは
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
とうさんのうまれた田舍ゐなか美濃みのはうりようとするたうげうへにありましたから、おうちのお座敷ざしきからでもおとなりくにやまむかふのはうえました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
となりかた身代みがはりにつてくだすつたやうなものだから、此方こちらなほつたら、おはかたづねて、わたしまゐる、おまへ一所いつしよ日參につさんしようね。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
卯平うへいはおつぎのするまゝまかせてすこくちうごかすやうであつたが、またごつときつける疾風しつぷうさまたげられた。おつぎはとなりには騷擾さうぜういた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
真佐子はとなりに復一がいるつもりで、何気なく、相手のいない側を向いてたずねた。ひと足遅れていた復一は急いでこの位置へ進み出て並んだ。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「早く早くおとうさんをお起こしして……それからおとなりに行って、……お隣のおじさんを起こすんです、火事ですって……いいかい、早くさ」
火事とポチ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そばまどをあけて上氣じやうきしたかほひやしながらくらいそとをてゐると、一けんばかりの路次ろじへだててすぐとなりうちおなじ二かいまどから
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
さや、夜鳥も啼かず、藪かげのとなりの寺もしんしんと雨戸したれ。時として川瀬のおとの浪のと響き添ふのみ。それもただ遠し、気疎けうとし。
マリユスとコゼットとの幸福は、今後かかるものととなりしなければならないように定められていたのか。それはもう動かし難い事実だったのか。
「何をぼんやり立ってるの? 皆さんメシュー御紹介ごしょうかいいたしますわ。この方はムッシュー・ヴォルデマール、おとなりぼっちゃんです。それからこちらは」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
かべとなり左官夫婦さかんふうふが、朝飯あさめしぜんをはさんで、きこえよがしのいやがらせも、春重はるしげみみへは、あきはえばたきほどにも這入はいらなかったのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そのとなりはタン屋という店でしたが、ここでも主人が黄色な顔を緑色にしてふるえながら、十円でマッチ一つ買いました。
それで皇后はさつそくお聞きとどけになりまして、新羅しらぎの王をおうまかいということにおきめになり、そのとなり百済くだらをもご領地りょうちにお定めになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
特に武松が眼を熱くしたのに、例の“となり近所ノ衆”が見送りのうちにじっていたことだった。それさえあるに、中の一人が出て来て、武松の手へ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
廿四日、天気てんきし。となりきゃくつとめて声高こわだか物語ものがたりするに打驚うちおどろきてめぬ。何事なにごとかと聞けば、衛生えいせい虎列拉これらとの事なり。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それは夏のことで、嘉市はすこし体が悪いので寝ていたが、何時いつの間にかねむっているととなりへやでうんうんとうなる声がした。びっくりして起きて往ってみた。
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
宇宙万象の秋、人の心に食い込む秋思の傷みをえいつくして遺憾なく、かの芭蕉の名句「秋ふかきとなりは何をする人ぞ」と双壁そうへきし、蕪村俳句中の一名句である。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
第二は是である、「己のごとく汝のとなりを愛すべし」。この二つより大なる誡命いましめはない。(一二の二九—三一)
貴殿あなた何處どこ御出身ごしゆつしんですか』と突然とつぜん高等商業かうとうしやうげふ出身しゆつしんなにがしいまある會社くわいしや重役ぢゆうやくおぼえ目出度めでた一人ひとりをとこ小介川文學士こすけがはぶんがくしとなりすわつて新來しんらいきやくひかけた。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
御可憐おかはいさうなは信太郎とやら云ふ御子おこどすえなー、大方をゝかた其女そのあまに毎々/\、いぢめられてやはりなはつたでしやろ、わたしうちとなりにも貴女あなた継子まゝこがありましてなー
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
かれくするのは、別段べつだん同情どうじやうからでもなく、とつて、情誼じやうぎからするのでもなく、たゞみぎとなりにゐるグロモフとひとならつて、自然しぜん其眞似そのまねをするのでつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
供前ともまえさまたぐるのみならず、提灯を打落うちおとし、印物しるしものもやしましたから、憎い奴、手打にしようと思ったが、となりづからの中間ちゅうげんを切るでもないと我慢をしているうちに
しかし太った紳士がそのとなりから慌てて立ち上ろうが、汽車が動き出そうが、太った紳士が再びそのかたわらへ大きなおしりをどっかと下して座席がへこもうが、二等室の一隅いちぐう
蝗の大旅行 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
まちは、なみだうかんでると、そつとひとみぢた。そして、いつまでもじつとしてゐた。はじめは、兄妹きやうだいたちのこゑとなりしつからきこえてた。そして彼女かれかなしかつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
小兒ちごうつくしきさまるべきを、格子かうしそとよりうかゞふに燈火ともしびぼんやりとして障子しようじうるるかげもし、お美尾みを美尾みをよびながらるに、こたへはとなりかたきこえて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私は知らず/\となり店の方へ首をのばし、しきりにそちらへ気をとられて居るのを見て、仕立家の主婦あるじ
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
友人いうじんいはく、我がしたしき者となり村へ夜話よばなしゆきたるかへるさ、みちかたはら茶鐺ちやがまありしが、頃しも夏の事也しゆゑ、農業のうげふの人の置忘おきわすれたるならん、さるにてもはらあしきものはひろかくさん
としとったおかあさんはとなりにわとり今日きょうはじめてたまごをうんだが、それはおかしいくらいちいさかったこと、背戸せどひいらぎはちをかけるつもりか、昨日きのう今日きょう様子ようすたが
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
それでもやはり、子供こどもとなり部屋へやで遊んでいる間、部屋へやの戸を半分はんぶん開放あけはなしにしておいた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
千日前「いろは牛肉店」のとなりにある剃刀屋かみそりやの通い店員で、朝十時から夜十一時までの勤務、弁当自弁の月給二十五円だが、それでも文句なかったらと友達が紹介してくれたのだ。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
わが封建ほうけんの時代、百万石の大藩にとなりして一万石の大名あるも、大名はすなわち大名にしてごうゆずるところなかりしも、畢竟ひっきょう瘠我慢のしからしむるところにして、また事柄ことがらは異なれども
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いくられて見ても痛むのはやはり痛いので閉口して居ると、六つになるとなりの女の子が画いたといふを内の者が持つて来て見せた。見ると一尺ばかりの洋紙の小切こぎれに墨で画いてある。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
叱つてもさとしても手堪てごたへがないので、松村も考へた。よもやとは思ふものゝ世間にためしが無いでもない。小幡の屋敷には若い侍がゐる。近所となりの屋敷にも次三男の道樂者がいくらも遊んでゐる。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
一同はホーベスの遺骸いがいを、左門の墓のとなりにあつくほうむった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
もぐらえい、とんとこせ となりのせっちんもりくやせ(日向ひゅうが
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もみする石臼いしうすの音、近所となりにごろごろとゆるぎむれば
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
となりのとなさん、何処どこへいた。
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
「おまえは、よくおとなりへゆくが、おかみさんの仕事しごと邪魔じゃまをしてはいけないよ。」と、おばあさんは、二郎じろうにいいかせたのです。
お化けとまちがえた話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
入もじ/\致せしがやが越中犢鼻褌ゑつちうふんどしを取出し見て是なり/\と申ければ一同どつとわらひつゝ今夜はとなり座敷にて大聲をあげ馬鹿な騷ぎを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
前刻さつきせ、とつてめたけれども、それでも女中ぢよちゆうべてつた、となり寐床ねどこの、掻巻かいまきそでうごいて、あふるやうにして揺起ゆりおこす。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二返行つても、三返行つても、三千代はたゞ御茶をつてる丈であつた。其くせ狭いうちだから、となりへやにゐるより外はなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『武鑑』について文節の居処を検するに安政四年より六年まで下谷御徒町に住んでいた。鷲津毅堂ととなり合いであったのはこの時であろう。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)