空想くうそう)” の例文
「もし自分じぶんが、あの佐倉宗吾さくらそうごだったら。」と、空想くうそうしたことでした。あの悲惨ひさんきわまる運命うんめいにあわなければならぬと想像そうぞうしたのです。
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
王子は一人で空想くうそうにふけりながら、大空をながめてるうちに、いつか、うっとりした気持きもちになって、うつらうつらねむりかけました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
子供らしい空想くうそうふけったものだが、以来、私はこの橋の上の景色を忘れずにいて、ふとした時になつかしくおもい出すのである。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
でもそれがほんとうのしっぽであったら、きっとおなかか頭をうんとひどくけとばされるだろうと言うと、かれの空想くうそうはすこしよろめいた。
アナスチグマツト——さういふ寫眞用語しやしんようごがいかに歴亂れきらんとしてわたし腦裡のうりうごき、いかに胸躍むねをどるやうな空想くうそうゑがかせ、いかに儚ない慰樂いらくあたへたことか?
わたくしはあの救助係きゅうじょがかりの大きな石を鉄梃かなてこうごかすあたりから、あとは勝手かってに私の空想くうそうを書いていこうと思っていたのです。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
これはもちろん空想くうそうである。しかしもしはえ絶滅ぜつめつするというのなら、その前に自分のこの空想の誤謬ごびゅう実証的じっしょうてきたしかめた上にしてもらいたいと思うのである。
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ここだけはほんとのことなので、思わずくすっと笑ったとき、空想くうそうきりのように消えてしまった。ゆく手から、風にみだされながらいつもの声がきこえたのである。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
土噐の形状中にはかごかたせしものも有れは此考へは一概に空想くうそうなりとは云ふ可からす。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
まえさん、ほかにすることがないもんだから、ばかげた空想くうそうばっかしするようになるのさ。もし、のどならしたり、たまごんだり出来できれば、そんなかんがえはすぐとおぎちまうんだがね。
このうたおそらく空想くうそうでせうが、この場所ばしよあるひはさうした景色けしきは、蓮月れんげつ始終しじゆうてゐたにちがひありません。だから空想くうそうであつても事實じじつおなじであり、むしろ事實じじつより力強ちからづよひとこゝろひゞくのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
はたして、自分じぶんは、だったろうか。ほんとうのおかあさんは、ほかにいるのだろうか? うえで、かれはいろんな空想くうそうにふける。
高い木と子供の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼくらは空想くうそうでならどんなことでもすることができる。けれどもほんとうの仕事はみんなこんなにじみなのだ。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
これは球突たまつきすこしやつた人のたれしも經驗けいけんする事で、よる電氣でんきして床にはひるとくら闇の中に赤白の四つのたまをのせた青い球台たまたいかんで來て、り方を中で空想くうそうしたりする。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
空想くうそうつくりながらこれまでにつくげたのだから、その作者さくしやちから十分じゆうぶんあつたことがわかります。このひと學者がくしやであり文學者ぶんがくしやですから、言葉ことばのあやを十分じゆうぶん心得こゝろえて、すこしのむだもしないでゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
そして、その天使てんしあおそらとをむすびつけてかんがえると、うつくしい、また愉快ゆかいないろいろな空想くうそうが、ひとりでに、わいてきたからであります。
町の天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あれは葛丸くずまる川だ。足をさらわれてふちに入ったのは。いいや葛丸川じゃない。空想くうそうのときのくらい谷だ。どっちでもいい。水がさあさあっている。「いいな。あそごの水のかえところよ。」
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
これはちょっとると、いかにも紫陽花あぢさゐはな樣子ようすこまやかにうつしてあるようにえますが、じつ紫陽花あぢさゐつくつたのでなく、見慣みなれてゐるはな模樣もよう空想くうそううかべて、うつくしく爲立したてたにぎません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
なみおとのような、とりこえのような、またかぜくるひびきのような、さまざまなおとのするあいだに、いろいろなことが空想くうそうされるのでした。
汽船の中の父と子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
にんは、かおると、そのときのことをかたりあって、とおみなみうみ空想くうそうしました。そして、はるになって、つばめがんできたとき
南方物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれらは、このごろは仕事しごともないし、ただ空想くうそうにふけったり、むかしのことをおもしたりしているよりほかはなかったのであります。
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、そのうまつように工夫くふうしました。そして、それをつくえうえにのせてみては、いろいろと空想くうそうにふけっていたのであります。
びっこのお馬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おとこは、さまざまな空想くうそうにふけりました。そして幾日いくにち幾日いくにちたびをつづけました。おとこは、よるになるとさびしい宿屋やどやまりました。
おかしいまちがい (新字新仮名) / 小川未明(著)
このはなしは、やがて、きさきのおみみにまでたっすると、きさきけても、れても、そのたま空想くうそうかんで、物思ものおもいにしずまれたのであります。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ああ、あのつめたい、るような、きりないようにはならないものか。」と、はなは、しばしば、空想くうそうしたのであります。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれ前方ぜんぽうえるとお国境こっきょう山影やまかげなどをながめて、そのやまいただきんでいるくものあたりに空想くうそうはしらせていたのであります。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
自分じぶんのような人目ひとめをひかないはなには、どうして、そんなに空想くうそうするような、きれいなちょうがきてまることがあろう?」
くもと草 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしは、子供こども時分じぶん星空ほしぞらるのが、なによりきだった。かみさまのかいたでもるようで、いろいろふしぎな空想くうそうにふけったものだ。」
アパートで聞いた話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
学校がっこううらたけやぶがかなしそうにっています。すると子供こどもは、まどそとをじっとながめて空想くうそうにふけりました。これをつけた教師きょうし
教師と子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あれは、みんな自分じぶんえがいた空想くうそうぎなかったとおもったでありましょう。そして、あのときの子供こどもは、おおきくなりました。
幾年もたった後 (新字新仮名) / 小川未明(著)
パチパチとみずのはねるおとがして、銀色ぎんいろさかながさおのさきでおどって空想くうそうは、やぶられました。このときおじさんがおおきなふなをられたのでした。
花かごとたいこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「きっと、これから、きた店飾みせかざりが流行りゅうこうすることだろう……。」と、また空想くうそうにふけりながらゆくものもありました。
生きた人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こううえ空想くうそうしながら、花屋はなや店頭みせさきにあった二鉢ふたはちのアネモネは、ある大学生だいがくせいが、まえって、自分じぶんたちをつめてるのにづきました。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おとうとは、めずらしい写真しゃしん見入みいったり、またいてあるおもしろそうな記事きじに、こころうばわれて、いろいろの空想くうそうにふけるであろうとおもったのでした。
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるとき、自分じぶんは、そんなことを空想くうそうしたことがあります。そして、前夜ぜんや、ふしぎにも、むしになったゆめたのでした。
おけらになった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、つきあかるくらすばんに、うみおもてかんで、いわうえやすんで、いろいろな空想くうそうにふけるのがつねでありました。
赤いろうそくと人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ほんとうに、いま、そのおねえさんがおいでたなら、どんなにわたしはしあわせであろう。」と、のぶは、はかない空想くうそうにふけったのであります。
青い花の香り (新字新仮名) / 小川未明(著)
佐吉さきちは、ごと、そのほしをながめて空想くうそうにふけりました。そこで、そのうち手足てあしさむいのもわすれて、いつしかこころよねむりにはいるのがつねでありました。
酔っぱらい星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さよは、それでほおずきをおうか、南京玉なんきんだまおうか、それともなにかおままんごとの道具どうぐおうかと、いろいろ空想くうそうにふけったのであります。
善いことをした喜び (新字新仮名) / 小川未明(著)
このみちばたにいたちいさなはなは、このなかに、ぱっとかわいらしいひとみひらいたときからどんなに、ちょうのくることについて空想くうそうしたかしれません。
くもと草 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おとこは、はやまちいて、はいってあたたまろうなどと空想くうそうをしていたのでありますが、いまは、それどころでなく、まったく心細こころぼそくなってしまいました。
宝石商 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ああ、わたしおもったことは、空想くうそうではなかった。ぜひ、いっておおきな仕事しごとをしよう。」と、おとうさんはおもいました。
青いランプ (新字新仮名) / 小川未明(著)
むかしから、正義せいぎのためにたたかった人々ひとびとは、そのすくないなかひとであって、おおくのひとたちから、迫害はくがいされたのだ。きみ空想くうそうをして、不安ふあんになるのも無理むりはない。
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
このとき、あかは、西にしやましずみかけていました。三にん少年しょうねんは、しばらくだまって、地平線ちへいせんをながめながら、おもおもいの空想くうそうにふけっていました。
太陽と星の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは、まれわったようにからだつよくなって、ふたたびこのなかはたらくことのできる、ながい、ながい、未来みらい生活せいかつ空想くうそうされたからであります。
石をのせた車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、いまにもなにか不思議ふしぎな、めずらしいものが、その小山こやまのいただきのあたりにおどがらないかと、はかない空想くうそういだきながらっていたのでした。
北の少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さまざまなことを空想くうそうしたり、かんがえたりしていると、ひとりでいてもそんなにさびしいとはおもわなかったからです。
赤い船のお客 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、よくこんな空想くうそうをします。それから、かってにそのさきをつづけるのでした。自分じぶんは、はたして、このきりぎしのうえつだけの勇気ゆうきがあろうか。
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
ふだんから、平和へいわあいするあにであるのをっていたけれど、こうした場合ばあいに、希望きぼうや、空想くうそうが、どんなかたちであらわされるだろうかとおもったからです。
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、にぎやかなまちや、たのしい生活せいかつのことを空想くうそうすると、おとこは、すこしもさびしいとはおもいませんでした。
おかしいまちがい (新字新仮名) / 小川未明(著)